育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

化膿性滑膜炎を疑う症例から分離された細菌の抗菌薬感受性(Miagkoffら2020年)

カナダ、モントリオール大学から発表された、10年にわたる化膿性滑膜炎(疑いを含む)症例について、細菌培養検査と薬剤感受性試験をまとめた調査。 これによると、全体の49%から細菌が分離され、成馬(文献によると6ヵ月以上)では、グラム陽性菌が多く分…

競走馬における起源不明の化膿性滑膜炎(Byrneら2020)

主に当歳など子馬では、ストレスをはじめとするさまざまな原因で免疫機能が低下し、菌血症となった結果、血行性に化膿性滑膜炎が発生すると考えられています。 一方で、成馬では穿孔性の外傷など明らかな原因を伴わない化膿性滑膜炎はまれだと考えられていま…

2歳サラブレッド競走馬の運動器損傷のリスク因子(Coggerら2006年)

運動器損傷のリスク因子に関する解析は、非常に難しい調査です。調教場や調教師によって方針が異なることや、馬によって調教メニューをアレンジすることが普通です。したがって、実際の症例や調教している競走馬の集団についてどんな方法を用いて調査しても…

浅屈腱のエコー所見と基質の加齢の影響ほか(Gillisら)

馬の浅屈腱は、成長や加齢にともない、弾性率(Elastic modulus:物体の変形しにくさを表す数値)が増加することが明らかになっています。 これには、コラーゲン線維の架橋構造が増加することが関係しているようです。 また、年齢が増すごとに浅屈腱の腱線維…

調教初期にみられる浅屈腱のエコー所見の変化 ほか(Gillsら)

育成期のサラブレッド競走馬では、浅屈腱の横断面積増加がみられることがあります。成長期の屈腱に運動負荷がかかることでこのような症状が出現するのですが、詳しいメカニズムはわかっていません。また、経験上、これらのうち数%程度の割合で屈腱炎を発症…

上腕骨や骨盤の完全骨折リスクと高速調教をしない期間の長さとの関連(Carrierら1998年)

アスリートである競走馬にとって、休養期間を設けることは身体的にも肉体的にも必要なことです。しかしながら、完全なリフレッシュをとれることはあまりなく、比較的強度の低い運動は続けられます。 数ヵ月の休養期間をとったあと、強い調教を始める場合には…

ニューマーケットの3つの大きな調教場における運動器損傷(Ramzanら2011年)

育成期と競走馬では調教強度が違うのもあると思いますが、ニューマーケットの調教場では運動器損傷の発生率がおよそ4頭に1頭で、脛骨骨折の比率が最も高いというのは意外でした。以前英国から来られた先生と、どれくらい運動器疾患が発生しているのか話した…

掌側/底側輪状靭帯損傷の回顧的調査71症例(Owenら2008)

球節部の掌側/底側輪状靭帯の損傷は、高齢の一般的な乗用馬に多くみられ、その多くは両側で靭帯の肥厚が見られます。 外貌からは球節の後面が出っ張った見た目となることが特徴で、このような見た目の球節では、超音波検査により皮下の線維化による肥厚と靭…

肩甲骨疲労骨折の2頭(Davidsonら2004年)

馬における肩甲骨疲労骨折の症例は非常にまれで、ほとんど報告がありません。 この2頭の症例報告では、シンチグラフィ検査で異常が検出され、X線検査で骨折の所見が得られました。いずれの症例も、強調教後に急性の前肢跛行を認めたとのことです。立位でのX…

第一趾骨底側骨片を原因とする跛行19症例(Barclayら1987)

後肢球節において、第一趾骨底側の骨片は多く見られる所見です。この部位は種子骨靭帯や輪状靭帯の付着部が剥離することや、骨軟骨炎に関連した骨片として発生します。骨軟骨炎で関節面におよばず関節炎と関連しない場合には予後は良好です。関節面におよん…