育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

トウ状骨の粉砕骨折と深屈腱断裂(Hoegaertsら2005)

トウ状骨の骨折は、慢性跛行の原因となります。 トウ嚢に対して繰り返しステロイド投与を行うことは、深屈腱実質の変性を招くことがあり、注意が必要です。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 参考文献 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 要約 10歳…

トウ状骨骨折の17症例(1982-1992)(Lillichら1995)

トウ状骨はトウ嚢とよばれる袋の中に存在し、蹄骨と深屈腱の間に位置しています。アクシデントによる外力や外傷によって骨折がおきることが知られています。 トウ状骨骨折が起きると、中程度から重度の跛行を呈しますが、身体検査では特異的な所見が得られる…

繫靱帯脚炎の超音波、CT、MRI、剖検所見(Elemmawyら2019)

競走馬の繫靱帯脚炎 種子骨炎に関連した繫靱帯脚炎は育成期から競走期にかけてよくみられます。 十分な休養と運動制限を組み合わせたリハビリを経ることで、良好な治療成績を得ることができます。また、近年では繫靱帯脚部辺縁損傷に対して、損傷部分をトリ…

ウェルカム獣医学生研修!

2023.12.14 追記・編集 (公益財団法人)軽種馬育成調教センター(略称:BTC)は、北海道浦河町にある軽種馬育成施設です。以下の3つの目的のために事業を行っている団体です。 軽種馬の育成調教技術の改善・普及 軽種馬の育成調教技術者の養成 軽種馬育成調…

馬における高速トレッドミルを用いた上気道検査:291頭の臨床例(Tanら2005)

運動時内視鏡検査では、複数の所見が見つかることが一般的です。いくつかの所見は関連しているかもしれず、特に披裂喉頭蓋ヒダの軸側変位は、その程度が重度であるほど、他の所見も多く見つかることがわかっています。 これらの所見が実際に臨床的にパフォー…

英国の若齢競走馬における中手骨背側の疾患と調教の要素の関連(Verheyenら2005)

調教初期段階に速いタイムの調教やキャンターの量(距離)を急激に増やすことは、ソエの発生リスクを上昇させます。一方で、徐々にキャンターや速い調教を増やしていくことで、累積の距離が長い馬ではリスクが低くなることがわかっています。 (adsbygoogle =…

外側膝蓋靱帯の超音波検査における正常と異常所見(Gottliebら2016)

膝関節を原因とする跛行のうち、膝蓋靱帯の損傷は多くありません。靱帯損傷の多くは外傷と関連していて、ほとんどで靱帯付着部の骨折を伴うことが報告されています。 膝蓋靱帯は正常な馬でも超音波検査画像は独特な見え方をしますが、重度の跛行を伴う靱帯損…

1歳時にEE切開を行った馬のその後の競走パフォーマンス(Curtissら2020)

喉頭蓋エントラップメントは、喉頭蓋下の組織によって喉頭蓋が覆われてしまう状態で、プアパフォーマンスおよび運動時の異常呼吸音を呈することがあります。 この疾患のサラブレッドにおける本当の所見率はよくわかっていないものの、1歳セリのレポジトリ内…

大腿骨内側顆の軟骨下骨嚢胞と併発または続発した脛骨の軟骨下骨病変(Bonillaら2016)

成馬における脛骨の軟骨下骨病変は、慢性的な骨関節炎に併発してみられることがあります。そして、しばしば大腿骨の軟骨下骨病変を伴います。 半年以上の慢性後肢跛行を呈した、大腿脛骨関節の慢性関節炎の症例4頭の治療成績が報告されています。これらの症…

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞12症例1983-2000年(Textorら2001)

脛骨近位の軟骨下骨嚢胞所見は、若い馬では骨軟骨症に関連すると考えられる病変もある一方で、運動している成馬では大腿脛骨関節の骨関節炎および大腿骨の骨軟骨病変と併発してみられることがあります。 若馬の骨軟骨炎(OA)に関連すると考えられる軟骨下骨病…

MRIとエコーで喉頭異形成を診断した5例(Garretら2009年)

喉頭片麻痺はほとんどが左に発生し、これは左反回喉頭神経が障害されやすいためと考えられています。これは解剖学的な特徴に起因するという通説がありますが、病態形成についてはまだまだ不明な点も残されています。 一方で右の喉頭片麻痺はあまり多くなく、…

トレッドミル内視鏡検査と超音波検査および安静時内視鏡検査との関連(Garrettら2011年)

反回喉頭神経症は、左反回喉頭神経の障害により、輪状披裂筋が神経原生筋萎縮をおこすことで、披裂軟骨の外転がうまくいかなくなることが主要な病態です。萎縮をおこした輪状披裂筋は、安静時の披裂軟骨の外転不全につながるだけでなく、運動などで呼吸時の…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑫筋肉 その他の筋疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑪筋肉 遺伝性筋疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑩筋肉 総論

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑨汗腺の機能不全

9アパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑧血栓症

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑦弁疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑥不整脈 3度房室ブロック

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑤不整脈 心室期外収縮

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ④不整脈 心房細動

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ③上気道閉塞性疾患

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ②運動誘発性肺出血EIPH

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ①喘息Asthma

プアパフォーマンス 馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があ…

スタンダードブレッドのP1掌側または底側骨片の摘出時期によるパフォーマンス

サラブレッド競走馬では、第1趾骨底側の骨片は跛行の原因となることがあります。 一方で、スタンダードブレッドではこの所見はよくみられ、骨片摘出がよく行われているようですが、手術前後でパフォーマンスが変化することはなかったと報告されています。 参…

2歳競走馬における中手骨背側の疾患リスクと骨代謝マーカー(Jacksonら2005年)

中手骨背側の骨疾患 若齢の競走馬でよくみられる中手骨背側の骨疾患(DMD)は、小さな骨損傷および骨膜炎を主体とする病態で、疼痛や跛行を伴います。軽微な症状であれば調教は継続できるものの、疼痛や跛行が明らかな場合、治癒を優先させなければいけない状…

後肢P1底側骨片による跛行19症例(Barclay1987)

第1趾骨底側の骨片骨折は跛行の原因となることがあります。 この部位は種子骨靱帯をはじめとした球節後面の安定化を担う靱帯が付着しますが、これらに大きな負荷がかかると裂離骨折が発生します。 このタイプの骨折は後肢に多く発生し、1歳せりのレポジトリ…

12頭のサラブレッド競走馬における第三中手骨骨幹端完全骨折と関連した先行する病変(Grayら2017)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨皮質骨疲労骨折に対する骨穿刺術を行った28頭の追跡調査(Hanieら1992)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

サラブレッド競走馬の第三中手骨背側皮質骨折に対する外科的治療53例(Cervantesら1992)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…