育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

サラブレッド競走馬の第三中手骨背側疲労骨折に対する螺子固定56頭の成績(Dallapら1999年)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨背側皮質骨の疲労骨折に対する螺子固定116頭(Jalimら2010)

第三中手骨背側には運動により骨が圧迫され、たわむような負荷がかかります。繰り返し負荷がかかることで骨の修復できる以上の障害が続くと骨膜炎が生じ、さらに繰り返しの負荷が継続するとやがて疲労骨折を起こしてしまいます。 特に育成期にはよくみられる…

第三中手骨背側皮質骨の疲労骨折に対する治療法

背側皮質骨の疲労骨折 馬の第三中手骨は、管骨と呼ばれる骨です。 第三中手骨背側(正面)に骨と同じような硬い腫脹ができると、ソエや管骨骨膜炎と呼ばれます。骨に微細な障害が起き、修復する過程で骨増生が起きることで、硬い腫れが触れるようになります…

球節滑膜パッド増生に対するレーザー摘出11症例(Murphyら2001)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

前肢球節における滑膜パッドの線維性増殖63症例(Dabareinerら1996年)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

温血種における滑膜パッド内の骨軟骨片(Declercqら2008)

球節背側の滑液嚢 若い馬にみられる球節背側の滑膜パッド内の骨軟骨片は、偶発的な所見であることが多く、関節内の異常所見がみられないことがほとんどです。 一方で、高齢の馬で見られる滑膜パッド内の骨片は少ないものの、跛行と関連していて、関節内の疾…

特発性の関節内出血8症例(Vallanceら2012)

特発性の関節内出血は、腕節もしくは飛節にみられ、調教後の急性跛行のまれな原因の一つであることが報告されています。原因が不明な特発性疾患で、関節の病理組織学的検査では慢性的な滑膜過形成、ヘモジデリン沈着、肉芽腫性炎症の所見がみられました。 ほ…

中間膝蓋靭帯の損傷は他の膝関節の異常と同時に発生することが多い(Hoaglundら2019)

膝蓋骨に付着する靱帯は内側、中間、外側の膝蓋靱帯がある。なかでも中間膝蓋靱帯は膝蓋骨遠位から脛骨近位背側の脛骨粗面に終止する。 この靱帯の損傷はこれまでにあまり報告がないが、一般的には運動復帰の予後が悪いとされていた。今回は超音波検査で中間…

P1近位背側の局所的な放射性医薬品取り込み増加(Baileyら2007)

P1背側の骨代謝と疾患 P1近位背側は、球節の背側に位置しています。肢が着地してから球節が伸展する間に、P1背側には大きな負荷がかかります。これにより骨では活発な代謝が起こるほか、損傷が蓄積して修復が追い付かなかった場合には疲労骨折などの疾患が引…

スタンダードブレッド競走馬におけるP1矢状不完全骨折の治療前後のパフォーマンス比較(Tetensら1997)

P1矢状不完全骨折について P1の短い不完全骨折は疲労性傷害との関連が示唆されています。詳しくは以下の記事から equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 短い矢状骨折であっても…

3頭の競走馬におけるP1骨折前駆病変を疑う臨床および画像所見(Ramzanら2010)

調査でわかったこと 2010年にニューマーケットのRossdaleのグループから発表された症例報告。3頭の現役平地サラブレッド競走馬が速い調教後に跛行した。跛行グレードは1-2/10と軽度で、全ての症例で球節の屈曲痛や関節の腫脹はなく、P1近位背側の軽度な触診…

競走馬におけるP1掌側または底側面の骨軟骨片(Whittonら1994)

第一指(趾)骨の掌側(底側)骨片 第一指(趾)骨の掌側(底側)に発生する骨軟骨片は、靱帯付着部に発生します。球節に大きな捻転負荷がかかることで、靱帯が付着している部分がちぎれてしまう捻除骨折と考えられています。 この骨折は、関節や骨が未熟な…

MRIで診断したP1矢状溝部骨損傷に対する保存と外科療法の比較(Lipreriら2018)

P1矢状溝部の軟骨下骨損傷はX線検査での診断が難しく、MRIの特徴的な所見で診断される。この損傷による跛行に対する治療法やその予後についてはまだ報告が少ない。 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); equine-reports.…

馬の第一指骨傍矢状骨折に対するリニアまたはトライアングル法のスクリュー固定の生体外における比較(Labensら2019)

P1矢状骨折に対する整復方法はどれが優れているのか。 equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work 調査で分かったこと P1矢状骨折の整復方法について、リニア法とトライアングル法を生体外の実験で比較した研究。 解剖体を用いてP1矢状骨…

英国サラブレッドのP1矢状骨折に対するリニアとトライアングル法によるスクリュー固定63症例の成績

P1矢状方向の骨折(いわゆる縦方向の骨折)の内固定方法は、関節面に近いほうを背側と掌側に2本のスクリューを設置するトライアングル法が近年の主流となっています。 しかし、臨床成績を比較した調査はこれまで行われていませんでした。 equine-reports.wor…

MRIで診断した温血種馬のP1矢状溝部の損傷(Goldら2017)

P1矢状溝部の損傷は、X線検査で検出することが難しく、MRIで特徴的な所見があることがわかっています。 equine-reports.work equine-reports.work P1矢状溝部の損傷とその予後について、温血種の乗馬について追跡調査した結果。 ほとんどの馬で保存療法が選…

橈骨近位内側の軟骨下骨透過領域に対するスクリューによる治療8例(Roquetら2017)

はじめに 軟骨下骨嚢胞は大腿骨内側顆に比較的よくみられ、レポジトリ検査では膝関節において多く見られる所見です。 軽種馬におけるレポジトリーのためのX線検査ガイド (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 軟骨下骨嚢胞は橈骨近位にも発生…

馬の軟骨下骨損傷診断にMRIを用いた11症例(Zubrodら2004)

関節を原因とする跛行と特定できているのにX線検査では診断できない(明確な所見が得られない)ときにはMRI検査が有効です。 特に軟骨下骨の損傷はMRIでみられる特定のパターンがあり、X線検査ではこれを検出することが難しいことがわかっています。 単純X線…

P1矢状溝の軟骨下骨損傷の臨床所見と画像検査所見(Dysonら2011)

P1矢状溝部に発生する骨損傷は、単純X線検査では見過ごしてしまうようなわずかな所見しか得られない。MRI検査では微細な骨折や骨損傷として描出され、これは長期的な追跡調査でも変化なく残ってしまう。臨床的な重要度(炎症がアクティブかどうか)はシンチ…

競走用でない馬のP1不完全骨折をX線とCTで評価した(Brünisholzら2015)

P1不完全骨折と診断した競走用でない馬におけるX線とCT検査を用いた骨折線の評価を行った報告です。 調査対象となったのは、ほとんどは温血種で、サラブレッドよりも少し大きいサイズ(平均576kg)、年齢は平均9.5歳でした。 CT検査では骨折形状をより詳細に…

大腿骨内側顆の軟骨病変の跛行の原因としての評価11例(Schneiderら1997年)

調査で分かったこと 大腿骨内側顆は軟骨下骨嚢胞の好発部位ですが、軟骨のみの病変でも跛行の原因となることが明らかとなっています。 X線検査で異常が認められなかったものの、関節内麻酔で跛行が消失した症例に対して関節鏡手術を行いました。その結果、軟…

立位での手根管腱鞘の診断的腱鞘鏡(Miagkoffら2020)

はじめに 手根管症候群の原因はさまざまで、深屈腱または浅屈腱や支持靱帯、もしくはそのほかの軟部組織損傷が原因となる可能性があります。 equine-reports.work equine-reports.work 調査で分かったこと 腱鞘内の構造は、X線検査や超音波検査だけでは診断…

MRIと組織検査でOCD好発部位とされる子馬の大腿骨滑車を超音波検査で評価することの妥当性(Martelら2017)

大腿骨滑車稜のOCD 膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もありま…

大腿膝蓋関節OCD診断におけるX線と超音波検査の比較

大腿骨滑車稜のOCD 膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もありま…

子馬の脛骨OCD早期病変(Olstadら2007)

調査で分かったこと OC病変がどのように形成されるかは、馬よりも豚で研究が進んでいます。 豚におけるOC病態形成では、成長板軟骨から関節の間で、軟骨への血液供給が遮断されることで、虚血性の壊死を起こすことが大きく関わっていることがわかっています…

大腿骨滑車のOCD検出におけるX線と超音波検査の診断感度と評価者間の一致(Beccatiら2013)

大腿骨滑車稜のOCD 膝関節でOCDの発生が最も多い部位は内側または外側の滑車稜です。X線検査でみえる病変の大きさや範囲、骨片の数などは様々です。関節炎の原因となることがあるほか、跛行を呈すこともあり、なかにはパフォーマンスに影響する場合もありま…

通常成馬の足根関節軟骨の超音波検査による評価(Tomlinsonら2000)

調査で分かったこと 飛節の超音波検査では、特に下腿足根関節において、関節軟骨を評価することができます。 超音波検査を用いることで、距骨の内側または外側滑車および脛骨中間稜において、関節表面の軟骨を観察することができます。高エコーな骨の輪郭に…

足根関節OCD検出におけるX線超音波検査の比較前向き研究(Relaveら2009)

調査で分かったこと 脛骨内果の病変検出は難しく、関節面を完全に評価することが難しいことが原因と思われます。骨の形状から、まったく骨を重ならないように撮影することが難しく、また限局した病変はわずかな関節表面の変化のみで、X線検査では検出できな…

脛骨中間稜内側面のOCD病変(Kadicら2020)

調査で分かったこと 脛骨中間稜の病変は飛節のOCDでは最も多いとされます。これは骨片が比較的大きく、内外像または背外底内45度斜位像でほとんどが診断できます。 しかし、2020年に掲載されたこの文献では、脛骨中間稜内側面にのみ発生するOCD病変について…

サラブレッド1歳馬のレポジトリ検査でみられる明らかな病変の分布と所見率(Oliverら2008)

ニュージーランドのサラブレッド1歳における飛節と膝関節の骨軟骨病変所見率の調査。