育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折について その2:診断、治療および予後(Schnabelら 2018年)

前回の続きで、今回は診断・治療・予後に関しての総論です。次回以降はそれぞれの骨折型別の各論を予定しています。

 

Diagnosis and management of proximal sesamoid bone fractures in the horse
L. V. Schnabel W. R. Redding Equine vet. Educ. (2018) 30 (8) 450-455

 

臨床症状と診断

ほとんどの急性な単純種子骨骨折では、競走または運動後24時間以内に中程度から重度の跛行がみられる。関節におよぶ種子骨の骨折では、一般的には滑液の増量が顕著で、種子骨の触診痛および球節の屈曲痛を認める。典型的には、体中央部の骨折は最も重度の跛行と重度の軟部組織腫脹を呈す。重篤な種子骨骨折では、患肢に負重できないか、球節が沈下してしまう。このような症例の多くは、開放骨折となり、軟部組織や血管は激しく損傷している。
 急性種子骨骨折は通常の球節XRDに加えて特殊な撮影も行う。
・軸外型骨折に対しては、骨片があるほうにカセッテを当てて、50-60度撮りおろし像を撮る。
・基部骨折に対しては、骨片とは逆にカセッテを当てて、20度撮りおろし像を撮る。
・軸側骨折に対しては、60度斜位像を撮影する。

 慢性例で、特に種子骨尖部に離断した骨片がある場合、より高度な画像診断で、核シンチグラフィをすればアクティブな骨折とそれ以外を鑑別できる。診断麻酔は確実にすべきで、現時点の跛行の原因かどうか確かめることができる。スポーツホースでは、購買前検査など他の理由でX線検査をしたときに、陳旧性の丸い尖部骨片がみられることは珍しくない。このような骨片に関する文献情報は不足しており、陳旧性の離断骨片なのか石灰沈着なのかわからない。すべての症例で、繫靱帯のエコー検査をすべきで、これによって予後が決まる。

 

治療と予後

単純骨折に関しては詳しく後述する。複骨折や重篤な骨折は必要であれば関節固定をするか、安楽死をとるかのどちらかである。