育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折について その4(Schnabelら 2018年)

種子骨骨折についての各論、本日は種子骨中央部の骨折についてです。

 

Diagnosis and management of proximal sesamoid bone fractures in the horse
L. V. Schnabel W. R. Redding Equine vet. Educ. (2018) 30 (8) 450-455

 

体中央部骨折

すべての種子骨骨折の中で、片側性の体中央部骨折は外科的な治療が最も困難で、最も競走復帰の予後が悪い。保存療法は受け入れられる選択肢ではない。癒合不全や線維性癒合によって関節の不安定や慢性的な痛みを引き起こすからである。内固定術は、半周もしくは全周ワイヤー固定、ラグスクリューで、海綿骨移植や外固定を組み合わせる。近年の文献からはワイヤーよりもラグスクリューのほうがよく用いられており、ラグスクリューはより整復出来て、関節鏡ガイド下でより侵襲の少ない手術が可能である。典型的な体中央部骨折では、1本の4.5mmのフルスレッド皮質骨スクリューを基部から尖部に向かって挿入する。また3.5mmのスクリューは3本までなら報告がある。複数の3.5mmスクリューを用いる報告は、近位よりの体中央部骨折で尖部から基部に向かって打つ方法が報告されている。骨片の形状によってどのような手術が良いか決まる。たとえば、近位よりの骨折で骨折線が近位軸外側から遠位軸側に伸びている場合、垂直なスクリュー挿入が必要で、骨折と反対側から関節切開して行う必要がある。すべての症例で、術中に透視装置は極めて有効で、骨折の整復や適切なスクリューの挿入が評価できる。

もっとも最近の体中央部骨折内固定術の報告では、ラグスクリュー法では術後復帰44%(7/16)ワイヤー法では0%(0/9)であった。術前にどれだけ変位しているかは術後成績に影響すると考えられていて、遠位の骨折ほど変位しやすいと報告されている。この変位は関節面掌側/底側で、負重時にもっとも圧迫力がかかる部位でおきる。