育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

繫靱帯脚炎の新たな治療法:外科的切除(Kadicら 2019年)

繫靱帯脚部損傷に対しての新たな治療法。今回は辺縁の損傷に限定した研究の紹介です。

 

この研究では繫靱帯脚部の軸外側辺縁損傷に限定していました。著者はこれまでにない損傷の分類だと指摘していますが、先日まで紹介していた繫靱帯脚炎の重症度分類ではG1に当たるのではないかと思います。軽度の繫靱帯脚炎のはずですが出走率は19/29(65.5%)と低く感じます。調教に復帰できたものの出走を果たせなかった馬は、繫靱帯脚炎の再発だったのかどうか気になります。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”29頭のサラブレッド種競走馬の繋靭帯脚部辺縁の断裂および裂離への外科的処置

背景
繋靭帯脚部の損傷は馬でよくみられる。そのほとんどは一緒にされ、ひとつの病態とみなされている。
目的
繋靭帯脚部軸外側辺縁の損傷について特集し、その外科的管理と成績について報告すること。
デザイン
回顧的症例シリーズ
方法
2007-2015年の9年間に繋靭帯脚部の損傷と診断した馬を対象とした。超音波検査にて繋靭帯脚部軸外側辺縁の損傷が見られ、術中に同部の損傷を確認した症例を対象とした。
結果
29頭が組み入れ条件に合致した。19頭が術後に出走でき、9頭は調教には復帰できたが競走できず、1頭はフォローアップできなかった。
主な制限
本研究には非外科的に管理した症例がおらず、比較対象がないため断裂した組織を除去することによる貢献を確実に評価できない。
結論
本研究において、損傷の部位や形態は一貫していたことから病因には何らかの共通することがあると示唆された。本研究の症例群でみられた損傷のタイプは他と異なっており、これまでに記されてきた繋靭帯脚部損傷のサブグループに当たる。”