育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

繋靭帯脚炎の再生療法:PRP(Garrettら 2014年)

繋靭帯脚炎に対する再生療法(PRP)の報告。1歳で発症した種子骨炎を伴う繋靭帯脚炎に対して使用したところ、生理食塩水を投与した対照群と比較して、2歳時の出走は多かったものの、3歳以降の出走率に差は無く、全年齢で獲得賞金にも差は認められませんでした。

Injection of platelet- and leukocyte-rich plasma at the junction of the proximal sesamoid bone and the suspensory ligament branch for treatment of yearling Thoroughbreds with proximal sesamoid bone inflammation and associated suspensory ligament branch desmitis.
Garrett KS, Bramlage LR, Spike-Pierce DL, Cohen ND.
EVJ 2014 Vol.46(4):451-7.

”種子骨炎をともなう繋靭帯脚部炎における、種子骨と繋靭帯脚部接合部へのPRP投与

目的
種子骨炎を伴う繋靭帯脚炎を発症した1歳サラブレッド種に対するPRP投与が2歳、3歳および4歳時の競走パフォーマンスに与える影響を明らかにすること。

デザイン
ランダム化、症例研究

動物
39頭の1歳サラブレッド種

結果
PRP治療を行った馬は、生理食塩水を投与した馬よりも2歳時に少なくとも1レース以上出走する可能性が有意に高かった。3歳および4歳時には有意な差は認められなかった。獲得賞金はどの年を比較しても差は認められなかった。

結論と臨床的関連性
PRP治療群は対照群よりも2歳時に出走できる可能性が高かったが、3歳および4歳時には差が認められなかった。したがって、本研究からは、PRP治療により種子骨炎を伴う繋靭帯脚炎を発症した1歳サラブレッド種の将来的な競走パフォーマンスが改善するとは言えなかった。”

 


PRP療法単独では、この研究のように将来的なパフォーマンスの改善は望めないようです。浅屈腱への幹細胞移植でも議論されていましたが、やはり靭帯組織内に投与した物質がどの程度その場に残っているかも影響しそうです。