育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

球節内の繋靭帯脚部損傷(Minshallら 2006年)

繋靭帯脚部損傷では、球節の腫脹を伴うことがあります。これは繋靭帯脚部の球節と密接に関連した解剖学的位置関係によります。今回紹介する研究は、球節内を走行する繋靭帯脚部損傷をまず臨床検査と超音波検査で診断し、実際に関節鏡で観察した報告です。


Arthroscopic diagnosis and treatment of intra-articular insertional injuries of
the suspensory ligament branches in 18 horses
G. J. MINSHALL I. M. WRIGHT
EVJ 2006 Vol. 38(1) 10-14

"研究を実施した理由

繋靭帯脚部付着部と球節の臨床的な関連性がこれまで示されてきた。しかし関節内の繋靭帯脚部の長さや繋靭帯損傷における球節との関連は報告がない。

 

目的

球節内の繋靭帯脚部の割合を明らかにし、繋靭帯脚炎のうち関節内の損傷を認めた馬の臨床および関節鏡における所見を記録すること。

 

仮説

繋靭帯脚部の関節内損傷に対して関節鏡手術は診断および治療ができる。

 

方法

12の前肢と13の後肢より繋靭帯脚部の全長および球節内の部分の長さを記録した。繋靭帯脚部の関節内損傷は18頭で認められた。診断情報および関節鏡所見を記録し、治療結果は電話による聞き取り調査でフォローアップした。

 

結果

繋靭帯脚部のうち、前肢では28.45%が、後肢では29.56%が球節内であった。球節内の繋靭帯脚炎を発症した馬は全て球節の腫脹および跛行を認めた。16頭(17/22脚)では繋靭帯脚部の腫大が触診できた。超音波検査で15/17脚は構造の破綻が明らかで、背側関節面の損傷が予期されたのは12/17脚であった。関節鏡治療後、13頭は同等以上の運動レベルに復帰し、2頭は低いレベルの運動に復帰した。3頭は関係のない損傷で引退または安楽死とされた。

 

結論

繋靭帯脚部の損傷で球節の腫脹を伴う場合は関節も関与していることを考慮するべきである。関節内の損傷を確認し、直接的な管理をするには関節鏡手術が必要である。

 

潜在的関連性

繋靭帯脚部損傷のなかには、球節の関節鏡を行うことでその評価や管理に役立つことがある。"