育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

1歳時の種子骨X線所見と競走成績との相関(Spike-pierceら 2003年)

1歳のレポジトリX線検査において、種子骨炎の所見をグレード分類して将来への影響を評価した、大規模な調査研究です。
この分類は現在でも分類の基礎となっています。

Correlation of racing performance with radiographic changes in the proximal sesamoid bones of 487 Thoroughbred yearlings
D. L. SPIKE‐PIERCE L. R. BRAMLAGE
EVJ 2003 Vol.35 (4) 350-353

"研究を実施した理由
近位種子骨炎はよくみられる所見で、サラブレッド1歳馬における調査ではその診断に迷う。本研究では1歳馬の種子骨所見を分類し、2歳および3歳時の出走回数および獲得賞金に影響を与えるか調べた。

仮説
中程度から重度の種子骨炎を持つ馬では、2歳および3歳時のパフォーマンスが低下する。

方法
487頭のサラブレッド1歳馬のX線検査を調査した。種子骨の所見は7つの分類を行い、うち5つは血管孔の大きさ、形状、数に基づいた分類で、2つは軸外側面の形状をもとに分類した。2歳および3歳時の競走成績を調査し、出走回数および獲得賞金を調べた。

結果
2mm未満の平行な血管孔を持つ場合は、血管孔の数によらず正常とみなした。1または2つの2mm以上の幅で平行でない異常な血管孔を持つ馬では、正常馬と比較して2歳時の出走回数は少なかった。前肢または後肢で同様の所見が見られた場合、2歳時の出走回数および獲得賞金は減少した。前肢および後肢で同じ所見であった場合、差は認められなかった。3本以上の血管孔をもつ1歳馬は2歳および3歳時の出走回数および獲得賞金は減少した。種子骨辺縁の所見はパフォーマンスへの影響はなかった。

結論
血管孔が太い1歳馬では、通常の血管孔の馬よりも出走回数および獲得賞金は少なかった。

潜在的関連性
1または2本の太い血管孔は2歳時に影響する。3本以上の太い血管孔では2歳および3歳時に影響がある。若馬の購入時にはX線所見を判断するときにこれらのことを考慮に入れるべきである。"

 


この論文での詳しい分類は以下の通りでした。
①所見なし
②1または2本の幅2mm以下の線状陰影(図1)
③3本以上の幅2mm以下の線状陰影
④1または2本の幅2mmより太い線状陰影(図2)
⑤3本以上の幅2mmより太い線状陰影(図3)
⑥軸外側辺縁の透過像
⑦骨増生による軸外側辺縁の不整像