育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨体部骨折 ワイヤー固定(Martinら 1991年)

種子骨骨折のうち、最も競走復帰の予後が悪いのが体中央部でほぼ真二つに分かれてしまうタイプの骨折です。競走に耐えうる強度を得るためには内固定が必要ですが、大きな負荷がかかるためにうまくいかないこともあります。種子骨体部骨折の内固定がどのように改良されてきたのか、年代順に振り返っていきます。

この論文では種子骨外周にワイヤーを巻く、もしくは骨片を貫通させて巻く方法が紹介されています。馬の血統や用途が不明ですが、11/15が運動復帰に可能で、5頭は同等以上のレベルに復帰と優秀な成績です。

Circumferential Wiring of Mid-Body and Large Basilar Fractures of the Proximal Sesamoid Bone in 15 Horses
B B Martin Jr , D M Nunamaker, L H Evans, J A Orsini, S E Palmer
Vet Surg. Vol.20(1):9-14.

要約
15頭の馬で、12か所の種子骨体中央部骨折および4か所の大きな種子骨底部骨折に対して外周のワイヤー固定による整復を行った。18Gの鉄製ワイヤーを用いて、5頭で骨片の外周に、10頭で近位と遠位の骨片を貫いて固定した。臨床的に跛行がなく、X線検査で骨折治癒が明らかになれば運動に復帰した。11頭は運動競技を再開し、3頭は繁殖として供用され、1頭は引退した。5頭は元と同等以上の運動レベルに復帰したが、6頭は元よりも低いレベルとなった。