種子骨体中央部骨折の整復方法として最もメジャーとなったラグスクリューによる内固定は、この論文ではっきりとワイヤー固定よりも優れていることが示されました。
ただし、スクリュー固定による出走率も44%と高くはありません。
また、個人的に数例で外固定(キャスト)処置がなされなかった馬で、診断時よりも骨片が離れていくといった経験があります。したがって、競走復帰を考えるなら内固定手術が必要なことは当然として、すぐに外固定してできるだけ早く手術することで予後は改善すると考えています。
目的
片側の種子骨体部骨折の特徴を記述すること。
整復術後の成績に関連する要素を明らかにすること。
関節鏡でアシストしたラグスクリュー固定の手技を記述すること。研究デザイン
回顧的症例研究動物
片側の種子骨体中央部骨折の馬25頭方法
1996-2006年の間で、種子骨体中央部の骨折を外科的に整復した馬の医療記録、X線検査、術中関節鏡ビデオを回顧的調査した。シグナルメント、骨折の患肢と部位、骨折の特徴、手術手技を調べた。成績はX線所見および競走成績から評価し、カテゴリ変数はFisherの正確確率検定を用いて解析した。結果
前肢内側種子骨が最も多かった(80%)。手術手技と整復度合いは成績と有意な相関が見られた。スクリュー固定した馬は44%が出走したが、ワイヤー固定を行った馬は1頭も出走しなかった(P=0.047)。成績に影響した要素は骨折の整復度合いと外固定で、スクリュー固定ではより整復されたのは88%だったが、ワイヤー固定では22%であった(P=0.0002)。また外固定はスクリュー固定で88%、ワイヤー固定で22%に行われていた(P=0.0002)。整復できなかった馬ではすべて出走しなかった。結論
種子骨体中央部骨折の術後出走率は全体でわずか28%であった。ワイヤー固定と比較して、ラグスクリューによる固定は整復がうまくいき、優れた手技であると思われる。臨床的関連性
種子骨体中央部骨折に対して、関節鏡でアシストしたラグスクリューによる固定と覚醒時および初期に外固定を行うことで、運動復帰の可能性を最も高められる。