骨片を貫通させたワイヤーまたはケーブルによる内固定を、解剖体を用いて実験的に検証した論文の紹介です。この論文で比較したのは用いた材質(ステンレス鋼ワイヤーvs超高分子量ポリエチレン)と、用いた手技(サークラージ法vs縫合法)でした。内視鏡下で可能ということですが、実際には難しそうです。
実際の症例では、骨片はある程度離れてしまっていると想定されますし、どこまで有効でしょうか。そしてやはり、どのような手技を用いるにしても、周術期にはキャスト固定して繋靭帯支持装置にかかる負荷をできるだけ小さくすることが求められると考えます。
A Comparison of Ultra-High-Molecular Weight Polyethylene Cable and Stainless Steel Wire Using Two Fixation Techniques for Repair of Equine Midbody Sesamoid Fractures: An in Vitro Biomechanical Study
Paul G Rothaug , Ray C Boston, Dean W Richardson, David M Nunamaker
Vet Surge. 2002 Vol.31(5):445-54.
目的
実験的に作成した種子骨体中央部骨折に対して、16Gのステンレス鋼ワイヤーと、超高分子量ポリエチレンケーブルで内固定を行い、単調な伸展負荷に対する強度および破綻する強度を比較した。内固定の方法は内視鏡下で改良を加えた。新たな縫合方法による固定と、サークラージワイヤーによる固定の比較は、繰り返し試験後に骨片の間に生じたギャップで比較した。研究デザイン
生体外の、対になる解剖体の肢を用いた生体力学的な研究検体
成馬の解剖体の前肢21対方法
成馬の前肢内側種子骨に骨切りを行った。ステンレスワイヤーおよびポリエチレンケーブルを用いてサークラージ法で固定した10肢で、単調な伸展負荷に対する強度を測定した。サークラージ法で固定した4肢で、500から2000N(ニュートン)の繰り返し負荷を行って耐久力を調べた。この試験は、初めワイヤーで固定してワイヤーが破綻するまで行い、続いて同じ肢でポリエチレンケーブルで固定してケーブルが破綻するまで行った。8肢を用いてサークラージ法または縫合法で固定し、繰り返し負荷後にできるギャップを調べた。繰り返し負荷は500から2000Nで10000サイクル行った。これも同様にワイヤーを先に試験し、その後にケーブルで試験した。22肢を機械的な試験に用いた。残りの20肢は、内視鏡下でのサークラージ法および縫合法の手技確立のために用いた。結果
ポリエチレンケーブルによる内固定の伸展強度は、ステンレスワイヤーよりも34%高かった。ポリエチレンケーブルによる内固定の破綻強度は、ステンレスワイヤーの2-20倍であった。骨片間のギャップは、サークラージ法に比べて縫合法で153%少なかった。結論
超高分子量ポリエチレンケーブルは強度が高く、臨床応用できそうである。今回提案した新しい縫合法は、サークラージ法よりも骨片間のギャップを有意に減らすことができた。骨切り部のギャップは負荷サイクルが始まってすぐにできていたため、ワイヤー固定時には術後早期の期間にはキャスト固定による強固な支持の必要性が示唆された。臨床的関連性
ポリエチレンケーブルを臨床的に試験すれば、ステンレスワイヤーでみられるワイヤーの破綻の問題は解決できそうだ。内視鏡下のサークラージ固定は、内視鏡に精通した術者なら可能である。しかし縫合法は縫合法がサークラージ法に比べて臨床的な利点があるかどうかは生体を用いて試験する必要がある。