育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折と種子骨の構造変化(Anthenillら 2010年)

種子骨骨折にみられる組織学的特徴を把握することができれば、生前に診断して骨折発症を防ぐことができるかもしれません。
本日は骨折発症馬と非発症馬の種子骨を構造的に比較した論文を紹介します。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

"目的
 種子骨骨折の病態をつかむため、骨折発症馬と非発症馬の種子骨のマクロおよびミクロな構造の特徴を比較すること。

検体
 発症馬8頭、非発症馬8頭から種子骨を採取。

方法
 骨折部の傍矢状部と年齢および性別の合致した非発症馬の同様の部位について、外貌、X線、マイクロX線、組織学、組織形態学的な骨の多孔性、血管孔、ヘム色素、骨細管の異方性、および病理学的所見を評価した。

結果
 骨折した種子骨およびその体側肢の種子骨は、非発症馬と比較してコンパクトな骨細管を有していた。骨折した種子骨およびその体側肢の多くで、掌側面に局所的な修復およびリモデリングがみられた。骨折はミクロな構造的特徴と一致し、関節面の屈曲部から広がっていた。

結論と臨床的関連性
 骨折した種子骨では大きな負荷に対する適応が見られたが、局所的に過剰なリモデリングや多孔性がみられ、これによって完全骨折や致命的な損傷がおきやすくなる。完全骨折が起こる前に局所的な損傷を検出できれば、致命的な損傷を防げるかもしれない。種子骨の多孔性を評価できる画像診断が発展すれば、高リスク馬を同定して、調教やレーススケジュールを調整することで、種子骨骨折の発生を減らすことができるかもしれない。"