喉頭片麻痺は反回喉頭神経症ともよばれ、披裂軟骨の外転機能不全による気道閉塞をおこします。運動時に肺の換気が低下するため、競走パフォーマンスが落ちてしまいます。
これに対し、披裂軟骨を強制的に外転し固定させることで気道を確保する手術が喉頭形成術です。さらに声帯声嚢切除を組み合わせることで成績が向上することが明らかになっています。しかし強制的に喉頭形状および機能を変更することによるデメリットは、誤嚥や気道内圧の上昇といったことが考えられていますが、それが実際の臨床成績として示されたことはありません。
今回は喉頭形成術および声帯声嚢切除を行った馬の長期的な成績について調査した文献を紹介します。
”研究を実施した理由
左喉頭片麻痺の治療のために喉頭形成術および声帯声嚢切除を行った馬は、正常な喉頭機能を有する馬よりも炎症性気道疾患や運動誘発性肺出血といった呼吸器疾患のリスクが高いと考えられる。しかし、信頼性のある追跡データを得ることが難しく、正式な調査はこれまでに行われていない。目的
気道疾患の発生率、競走期間、出走回数、賞金を獲得した回数について、左喉頭片麻痺の治療のために喉頭形成術と声帯声嚢切除を行った馬と気道疾患のない馬を比較すること。方法
回顧的集団研究を用いて、手術、臨床および競走データを競走馬としての導入から引退まで調査した。手術した集団は左喉頭片麻痺の治療のために喉頭形成術および声帯声嚢切除を行い、組み入れ基準に合致した馬とした。症例にマッチする馬は、調教師、香港への導入年、導入前の国際レーティングが合う条件とした。結果
気管粘液や重度の運動誘発性肺出血による鼻出血といった呼吸器疾患は、対照群と比較して手術群で有意に多かった(それぞれP<0.001およびP<0.004)。競走期間は対照群よりも手術群で短く、これは鼻出血による引退が原因であった。手術群は対照群より出走回数は有意に少なかったが、賞金を獲得した回数に有意差はなかった。結論と潜在的関連性
馬主および調教師は、左喉頭片麻痺の治療のために喉頭形成術および声帯声嚢切除を受けた馬は呼吸器疾患のリスクが増加し、正常な喉頭機能を持つ馬よりも競走期間が短くなることに注意すべきである。手術を受けた馬は出走回数は少なくなるが、賞金を獲得した回数は他の馬と同等であった。”