育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

1歳時の内視鏡検査所見と2-4歳時の競走成績との相関(Garrettら 2010年)

1歳馬の上気道内視鏡検査所見が競走成績に影響するのかを調査した大規模な調査を紹介します。なんと4年間で2954頭のデータを解析しています!!(私個人で競走記録などの調査を100頭ほど行ったのですが、それでも割と大変な作業でした。)

安静時内視鏡検査で評価できる項目のうち、披裂軟骨機能の評価はやはり競走成績との相関があるようです。しかし運動時にどのように機能しているかは実際に走っているときに検査しなければわかりません。反回喉頭神経症は重症度が進行することもありますので、3-4歳時に喉頭機能はどうだったのかについても調査すれば面白い結果になりそうです。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”目的
 サラブレッド1歳馬における披裂軟骨の機能および喉頭蓋の構造の内視鏡における評価と2-4歳時の競走成績との相関を明らかにすること。

デザイン
 回顧的症例集

動物
 2954頭のサラブレッド1歳馬

方法
 1998-2001年に喉頭内視鏡検査を行った1歳馬の記録を調査し、標準化されたスケールでグレード分類を行った。Havemeyerのグレード分類を改変したもの(GⅠ、Ⅱ.1、Ⅱ.2、Ⅲ、Ⅳの5段階)を披裂軟骨機能の評価に、喉頭蓋の構造はG0-Ⅳで分類した。喉頭蓋が主観的に短いまたは細いと判断したら注釈付きで記録した。競走成績はオンラインのデータベースから収集した。

結果
 披裂軟骨機能がGⅡ.2の馬では、GⅡ.2未満の馬よりも4歳の時点で有意に獲得賞金が少なかった。GⅢでは3歳および4歳時の出走回数と獲得賞金が少なかった。GⅣは基準に合致する馬はいなかった。喉頭蓋の構造は、G2以上では、G2未満と比較して2および4歳時の獲得賞金は少なかった。喉頭蓋が短いと評価した馬は、2および3歳時の獲得賞金が少なかった。

結論と臨床的関連性
 本調査の解析から、GⅢの披裂軟骨機能の1歳馬は競走に使える可能性が低い。GⅡ.2の披裂軟骨機能、G3以上の喉頭蓋構造および喉頭蓋が短い1歳馬は、多くはパフォーマンスが低下している。購買を決めるときには、これらの要素を慎重に評価するべきである。”