育成馬臨床医のメモ帳

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トレッドミル内視鏡検査での動的気道閉塞の診断 パート2(Laneら 2006年)

安静時の内視鏡検査がどれだけ動的な上気道閉塞を予期できているのか、600頭のサラブレッド競走馬について、安静時と運動時の内視鏡検査所見を比較した文献を紹介します。
結論から言うと、安静時内視鏡検査だけでは運動時の状態を予測することは困難です。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”研究を実施した理由
 安静時および運動時内視鏡検査による上気道閉塞の診断の信頼性には議論がある。

目的
 安静時および高速トレッドミル内視鏡検査による上気道の診断を比較すること。

仮説
 安静時の内視鏡検査による上気道の所見は、動的な呼吸器閉塞を予期できない。

方法
 600頭の競走馬について、安静時の内視鏡所見と高速トレッドミル運動時内視鏡所見を比較した。診断に特異的な他のパラメーターについても検討した。

結果
 運動時の軟口蓋背側変位(DDSP)と軟口蓋不安定について、安静時内視鏡検査の診断感度は低く、0.15であった。内視鏡所見と異常呼吸音をあわせても、35%の診断ミスが発生した。安静時の喉頭機能のスコアは運動時の声帯虚脱および披裂軟骨虚脱と有意な相関があった。安静時のグレードが4/5であった馬の19%で運動時に完全外転ができていた。安静時のグレードが正常と判断されるG1または2/5の馬のうち7%で運動時の喉頭虚脱を認めた。吸気時の異常呼吸音および触診による筋肉の萎縮を組み合わせると80%の診断感度が得られた。

結論と潜在的関連性
 安静時の内視鏡検査は、動的な上気道閉塞の診断に信頼できるものではなく、単独で手術適応やセリの評価に使うべきではない。”