安静時内視鏡検査だけでは運動時の状態を完全に理解することができないことはこれまでも紹介してきました。そこで今回は安静時内視鏡検査の所見が、運動時内視鏡検査の所見とどのように相関しているのか検討した論文を紹介します。311頭と比較的多い頭数で検討されています。非常に興味深い論文ですのでぜひ原文もチェックしてみてください。
”目的
多頭数のオーバーグラウンド内視鏡検査(OGE)を回顧的に調査し、動的な上気道閉塞の発生率を明らかにすること、安静時内視鏡検査所見および運動時の異常呼吸音との相関を調査すること。方法
2010-2014年の期間に、プアパフォーマンスおよび運動時の異常呼吸音を主訴に運動時内視鏡検査を行った馬について回顧的解析を行った。シグナルメント、病歴、安静時および運動時の内視鏡検査所見について調査した。結果
311頭について調査した。249/311で1つ以上の動的な上気道閉塞を認めた。210頭のオス馬(オスおよびセン馬)からは、121頭で披裂軟骨虚脱を、111頭で声帯虚脱を認めた。101頭のメス馬からは、25頭で間欠的な軟口蓋背側変位(DDSP)を認めた。安静時の内視鏡検査で披裂軟骨G4と診断した馬は121/311で、オスに限れば92/210であった。安静時に披裂軟骨外転能力が低い所見は、運動時の披裂軟骨虚脱と相関があった。安静時に披裂軟骨外転能力が高い所見は、運動時の軟口蓋背側変位と相関があった。運動時の異常呼吸音は、動的な上気道閉塞の存在と正の相関があった。結論
運動時の異常呼吸音を伴う複数の動的な上気道閉塞は、プアパフォーマンスを主訴に検査した馬ではよくみられる所見であった。本研究から、プアパフォーマンスに関連する動的な上気道閉塞の性質を正確に診断するには運動時内視鏡検査が重要であると強調された。”