安静時内視鏡検査は、現在では広く普及している検査で、セリのレポジトリー検査などでも目にする機会が多くなってきています。私が普段診療を行っている範囲では、最も多い症状は運動時の異常呼吸音です。異常呼吸音の様子(ヒューという高い音やゴロゴロという音など)が特徴的な場合もありますが、たいていは検査してみるまで原因がはっきりとしません。これまでに紹介してきたように、運動時には様々な上気道疾患が確認され、運動時内視鏡検査は重要な診断ツールになってきています。ですが、運動時内視鏡検査を全ての馬が受け入れてくれるかというと、実はそんなことはなく、簡単な検査ではありません。
では安静時内視鏡検査ではどの程度の診断が可能なのでしょうか。本日はこれまでの研究データをメタ解析した文献を紹介します。過去の文献のデータをもとにしたこの解析によると、安静時内視鏡検査による運動時の披裂軟骨虚脱の診断特異度は95.1%と非常に高いものでした。
”背景
運動時の喉頭機能を予測する手段として、安静時の内視鏡検査は広く行われてきた。目的
安静時の喉頭内視鏡検査による、運動時の臨床的な反回喉頭神経症を予測する感度および特異度をメタ解析により明らかにすること。研究デザイン
メタ解析方法
安静時と運動時の上気道機能の評価が可能なデータがそろった馬を対象とした。安静時の内視鏡検査では、4または7段階評価のG1~2を正常、5段階評価のG1~3を正常とし、運動時内視鏡検査では、GAを正常と評価した。結果
12の文献から1827頭の馬を評価した。安静時内視鏡検査においてG1だった馬の3.5%、G2だった馬の11.9%が運動時に喉頭機能の異常を示した。安静時G3だった馬は、運動時のGAが16%、GBが26.4%、GCが57.6%であった。G3のなかでも、サブグレードが悪いほど、運動時の完全または部分的な麻痺を呈す割合は多かった。安静時内視鏡検査の感度は74.4%、特異度は95.1%であり、陽性的中率は85.6%、陰性的中率は90.5%であった。主な制限
安静時の喉頭機能分類に2つのグレーディングを用いている。他の上気道疾患について評価していない。結論
安静時内視鏡検査は運動時の喉頭機能を予測するツールとして感度があり、特異度は高い。複数の上気道疾患を評価するためには運動時内視鏡検査が重要である。”