育成馬臨床医のメモ帳

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1歳馬の安静時と運動時の内視鏡検査(Kellyら 2013年)

安静時内視鏡検査だけでは運動時の喉頭機能を完全に予測できないことは、これまでに何度も紹介してきました。では1歳時において、安静時と運動時の内視鏡検査所見にはどれほどの相関または開きがあるのでしょうか。57頭のサラブレッド1歳馬について調査した文献を紹介します。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”研究を実施した理由
 サラブレッド1歳馬における内視鏡検査は、競走に適しているかやセリの条件を満たしているかを確かめるために日常的に行われている。しかし、これまでの研究から、安静時内視鏡検査は上気道機能の診断が正確ではないことが示されてきた。

目的
 1歳馬の集団において運動時内視鏡検査が可能であるか調査すること、安静時と運動時の内視鏡検査所見を比較すること。

研究デザイン
 前向きコホート研究

方法
 単一の育成場において、57頭のサラブレッド1歳馬に対し、安静時(運動前および運動後)と運動時の内視鏡検査を行った。異常所見は記録し、グレード分類した。安静時と運動時の内視鏡検査所見を比較した。

結果
 オーバーグラウンド内視鏡検査は、十分に許容され、問題もほとんどなく実施できた。安静時に最も認められた異常所見は披裂軟骨の非対称(29頭)であったが、運動時には間欠的な軟口蓋背側変位DDSPが19頭で最多であった。検査間で喉頭機能および間欠的なDDSPの発生には有意な違いがみられた。安静時に見られなかったが、運動時にみられた異常所見は、小角突起尖部の虚脱、咽頭虚脱および輪状気管靭帯の虚脱であった。運動時の間欠的なDDSPの発症は、喉頭蓋軟骨構造のG>2および上気道の感染症既往歴と有意な相関が認められた。

結論
 オーバーグラウンド内視鏡検査は、サラブレッド1歳馬において安全で、上気道の機能を評価するために有用である。安静時および運動時の内視鏡検査結果に有意な違いがみられたことから、安静時内視鏡検査では、運動時に起こる病態の発生を予測するには不十分であることが示唆された。

潜在的関連性
 サラブレッド1歳馬においてオーバーグラウンド内視鏡検査は、上気道の機能を評価するために有用であり、安静時の標準的な検査所見にさらなる追加情報が得られる。”