育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭片麻痺に対する喉頭形成術と声帯および声嚢切除(Kiddら 2002年)

喉頭片麻痺に対する手術は、以前は喉頭形成術と声嚢切除の組み合わせで行われていました。ですが現在では声嚢と声帯の両方を切除してしまう方法が取られています。

そこで今回は声帯切除を行う根拠となる文献のひとつを紹介します。ここでは声帯切除により成績が向上するわけではないが、運動時の異常呼吸音については改善できる可能性があると述べられています。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
喉頭片麻痺に対して喉頭形成術および声帯声嚢切除を行った80頭の医療記録を調査し、まず年齢や飼養目的による成功率の違いがあるか主観的および客観的な比較を行った。次に、過去の報告における喉頭形成術と声嚢切除の成功率と、喉頭形成術と声帯声嚢切除を組み合わせた場合の効果を比較した。主観的には、70%は手術が成功したと評価した。馬主や調教師による主観的な評価では、サラブレッド競走馬における成功率は66%で、他の血統(90%)よりも低かった。サラブレッド競走馬において、2歳以下の成功率は69%で、それ以上では61%であった。客観的なパフォーマンス指標による評価は17頭で行い、10頭(59%)は術後にパフォーマンスが改善した。主観的な評価と客観的な評価にはおおよそ有意な相関が認められた(P=0.078)。術後にも異常呼吸音が残ったのは6/69(8.7%)であった。本研究では成功したかどうかは主観的な評価と客観的な評価に相関はなかった
また年齢と手術の成功には関連がなかった。声帯切除を組み合わせることは、臨床的な手術の成功率よりも異常呼吸音をなくすことには重要である。”