育成馬臨床医のメモ帳

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ナショナルハント競走馬における喉頭形成術の成績(Barakzaiら 2009年)

喉頭形成術を行う目的は、虚脱した披裂軟骨を外転した状態で固定しておくことにより、運動時の気道を確保することです。これにより運動時のパフォーマンスが改善すると考えられています。披裂軟骨の外転は、5段階のグレード分類で評価されることが主流で、競走成績との相関が調査されてきました。
今回は、ナショナルハントというヨーロッパのなかでも特に長距離を走る障害レースの競走馬に対して、喉頭形成術の術後成績を評価した報告を紹介します。
「相関がない」という表題ですが、披裂軟骨の外転が中程度でも、競走成績が劣ることはなかったという点が重要です。一方で、術後に極端に外転が緩んでしまった馬については数が少なく、成績との相関は検討できなかったということです。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”目的
 ①サラブレッドのナショナルハント競走馬において、喉頭形成術後の披裂軟骨外転の喪失度合いを評価すること。
 ②喉頭形成術後の披裂軟骨外転の程度と術後の競走成績との相関を調査すること。

研究デザイン
 症例集

動物
 サラブレッドのナショナルハント競走馬68頭

方法
 ナショナルハント競走馬に対して、喉頭形成術および声帯声嚢切除を行い、1日、6日、6週間後に披裂軟骨の外転を評価した。競走記録を調査し、競走復帰、術後5走での獲得賞金および術後生涯の出走回数と披裂軟骨の外転に相関があるか検討した。

結果
 術後1日での披裂軟骨外転グレードの中央値はG2であったが、6週間後には中央値G3となっていた。術後1日でG1、2、3だった馬は、術後6週間でそれぞれ中央値1、1、0.5だけ外転グレードが悪化した。術後1日でG1だった馬は、術後1日でG3だった馬よりも6日後の外転グレードが悪化した。どの時点の外転グレードも、術後5走の獲得賞金、競走復帰、術後の生涯出走回数との統計学的な相関は認められなかった。

結論
 披裂軟骨が最大限に外転していても、それはG3の外転に比べて明らかに術後に緩んでしまいやすかった。ナショナルハント競走馬において、術後の披裂軟骨外転グレードは競走パフォーマンスのどの指標とも有意な相関は内容だった。一方で、術後の外転が思わしくなかった(G4または5)馬は数が非常に少なく、本研究からはそのような馬の競走成績には結論が出せなかった。

臨床的関連性
 一見したところ、G3の披裂軟骨外転グレードでもほとんどの馬は十分に競走できる。術後、中程度の披裂軟骨外転(G3)になってしまったからといって、長期的にはがっかりするようなものではないのかもしれない。”

 

 

ナショナルハントのレース映像は見ごたえがありますので、ぜひ一度ご覧ください。10分ほどあります。
ちなみにこのときは38頭が出走し、12頭が完走しました。


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