育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第一指(趾)骨の非粉砕骨折(Markelら 1985年)

第一指(趾)骨の骨折は、競走馬に多くみられます。関節面から矢状方向に伸びる骨折が多くみられますが、他の形状の骨折も認められることがあります。今回紹介するのは、骨折の形状を分類し、競走復帰やパフォーマンスへの影響について調べた少し古い文献です。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”回顧的な調査を行い、近位の骨片骨折を除いた非粉砕骨折の69頭の症例の記録を集めた。うち49頭は競走中もしくは追切での骨折であった。全ての症例でX線検査が行われ、骨折の形状から6つに分類した。

・中央部の短い矢状不完全骨折、長い矢状不完全骨折、矢状完全骨折
・背側前面の骨折
・遠位関節面の骨折
・底側突起の骨折
・骨幹部骨折
・斜骨折

4頭は治療する前に諦められた。65頭は治療を行い、63頭が退院した。退院した後の長期追跡調査では、4頭が跛行が持続したことにより安楽死となった。残りの59頭のうち、34頭は競走復帰、7頭は馬術競技やプレジャーホース、8頭は繁殖入り、10頭は追跡調査ができなかった。
スタンダードブレッドの方が、サラブレッドよりも多く競走復帰した。スタンダードブレッド競走馬は、30頭のうち23頭(76.7%)が競走復帰した。8頭は骨折前と同等のパフォーマンス、11頭はパフォーマンスが低下、4頭は不明であった。スタンダードブレッド競走馬の骨折タイプ別の競走復帰率は、骨幹部骨折(2/2)、長い矢状不完全骨折(4/4)、完全骨折(11/16)、短い矢状不完全骨折(4/7)、遠位関節面の骨折(1/2)、底側突起の骨折(1/2)であった。
サラブレッド競走馬は、21頭のうち11頭(52.4%)が競走復帰した。7頭は骨折前と同等のパフォーマンス、4頭はパフォーマンスが低下した。”