育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

披裂軟骨炎とうまくいかなかった喉頭形成術後の管理(Tullenersら 1988年)

披裂軟骨炎および喉頭形成術に関わる披裂軟骨の異常は、その後の管理が難しいことが分かっています。少し古い文献ですが、これらの症例に披裂軟骨切除を行い、競走馬として復帰できたかどうか調べた論文があります。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
内視鏡を用いて、75頭の異常呼吸音と運動不耐の症状をしめす馬の披裂軟骨構造の異常(原発性60頭、喉頭手術歴あり11頭)および喉頭片麻痺に対する喉頭形成術の失敗はあるが披裂軟骨の見た目は正常(4頭)を診断した。88%は競走馬で、サラブレッド54頭(72%)、スタンダードブレッド12頭(16%)であった。競走用でない馬は9頭(12%)のみであった。競走馬の76%は2-4歳齢で、競走馬でない馬は全て4歳以上であった。オスとメスの割合はおよそ2:1であった。披裂軟骨の異常を認めたうち、28頭は左、22頭は右、21頭は両側であった。62頭で披裂軟骨切除を行い、うち58頭は披裂軟骨の異常を示した症例(左22、右19、両側17)であり、残り4頭は喉頭形成術後であった。全体として、サラブレッド競走馬の45%が競走に復帰した。その内訳は左50%、右75%、両側22%であった。スタンダードブレッドでは20%しか競走復帰できなかった。競走馬以外の馬では、75%が元の用途に復帰できた。多くの馬は術後に引退してしまった。”