診断麻酔によって跛行の原因部位が特定できても、一般的な検査で異常所見が得られない場合もあります。そういうときには、場合によっては診断的関節鏡を検討するときがあります。
診断的関節鏡を行う理由は、重要な所見が得られるからです。得られた所見は、治療法や予後を決定する非常に重要な根拠となります。では具体的にはどのような所見が得られるのでしょうか。これについてまとめた少し古い文献を紹介します。
文献のハイライト
X線検査で診断できない腕節の損傷が、実はその約8割(33/41)
が第三手根骨に関するものであったことはこの研究の大きな発見でした。
第三手根骨は、スカイビュー像などを用いて徹底的に検査しても、透過像は見えるが臨床的な意義やそれが跛行に関与しているかは判断が難しく、診断には限界を感じることがよくあります。
治療方針や休養期間、予後を判断するために、診断的関節鏡も考慮すべきと思わせられる文献でした。
”要約
27頭で1つの腕節(橈骨手根関節または手根間関節)、7頭で同じ腕節の2関節もしくは両側の1関節の関節鏡を行った。全ての馬は跛行していたが、X線検査だけでは跛行の原因を特定できなかった。対象となったうち、27関節はX線検査で明らかな異常はなかった。残りの14関節は第三手根骨の橈側に軽度から中程度の透過性亢進または硬化像を認めた。
関節鏡によって得られた所見は
・第三手根骨の粉砕骨折(7関節)
・第三手根骨前面の不完全骨折(13関節)
・第三手根骨矢状方向への不完全骨折(1関節)
・中間手根骨の骨片骨折(1関節)
・第三手根骨関節軟骨の損傷(12関節)
・内掌側手根間靭帯の断裂またはほつれ(4関節)
・滑膜炎(2関節)
であった。
対象は全て競走馬で、内訳はスタンダードブレッド29頭、サラブレッド5頭であった。競走成績を調査し、手術前後で比較した。34頭中24頭は術前に出走歴があり、34頭中25頭が術後に出走した。1つの関節のみに関節鏡を行った27頭では、うち23頭(85%)が術後に出走した。”