育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

披裂軟骨部分切除と粘膜閉鎖(Tullenersら 1988年)

披裂軟骨部分切除を行う際に、切除後の粘膜を閉鎖するかしないかでどのように差が出るかを、実際に手術して検討した文献があります。少し古い文献で、それぞれ4例ずつと少ないです。このあとにそれぞれまとまった症例数の報告が出ています。

粘膜閉鎖をした場合→披裂軟骨部分切除と粘膜縫合の長期的研究(Parenteら 2008年)*1
粘膜閉鎖をしなかった場合→粘膜縫合しない披裂軟骨部分切除の術後成績(Barnesら 2004年)*2

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
8頭に左披裂軟骨部分切除を行い、その治癒を評価した。4頭は従来の方法で披裂軟骨部分切除を行い粘膜を並置縫合した。残りの4頭は披裂軟骨の粘膜を含むほとんどを切除し、声帯、喉頭小嚢をまとめて切除し粘膜閉鎖を行わなかった。術後は内視鏡検査によるモニタリングを行った。それぞれの術式の馬を2,4,8,16週後に1頭ずつ安楽殺した。披裂軟骨切除を行った部位の肉眼および組織学的な検査による剖検を行った。術後の発咳、嚥下障害、誤嚥性肺炎はみられず、どちらも術創治癒に関する問題は最小限であった。粘膜閉鎖を行わなかった馬では、切除した欠損部位はまず肉芽組織で管腔の面まで埋められ、次第に線維性の結合組織へと置換された。欠損部は治癒が見られ、16週後には完全な上皮化がおきており、喉頭が狭窄することはなかった。粘膜閉鎖を行った馬では8週後までに同様に治癒がみられた。3頭で閉鎖した粘膜の背側で一部に離開が認められた。”