育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

その他の損傷を伴う披裂軟骨炎に対する披裂軟骨切除(Deanら 1990年)

披裂軟骨炎の予後に影響する因子として、咽喉頭部の損傷が考えられ、その影響を調査した報告があります。

この論文は「損傷を伴う」とタイトルに記載されていますが、それが指すは広く、①鼻咽頭の瘢痕形成と喉頭蓋のエントラップメントまたは奇形、②対側披裂軟骨の麻痺、③咽喉頭部の粘膜発赤や腫脹、排出物といった感染もしくは炎症所見と定義されていました。

 

Arytenoidectomy for advanced unilateral chondropathy with accompanying lesions
P W Dean , N D Cohen
Vet Surg. Sep-Oct 1990;19(5):364-70. doi: 10.1111/j.1532-950x.1990.tb01209.x.

”損傷を伴う片側披裂軟骨炎は、両側披裂軟骨炎および複雑化していない片側披裂軟骨炎の馬よりも予後が悪いという臨床的な印象を確認するための、運動していない馬における披裂軟骨炎に関する前向き研究は現在行われていない。
手術の失敗は、死亡、安楽殺、永久的気管切開および再手術と定義した。手術の失敗にもかかわらず生存したことや、臨床的な改善のデータは、損傷の有無で比較した。
損傷を伴う片側披裂軟骨炎は、両側披裂軟骨炎や損傷のない片側披裂軟骨炎と比較して、手術がうまくいかない確率は高く、手術失敗までの時間は短かった。追跡調査期間の中央値6ヵ月の時点で、臨床的な改善は損傷を伴う片側披裂軟骨炎のほうが少なかった。内視鏡検査で炎症や対側の披裂軟骨麻痺が見られた症例では、瘢痕がみられた症例よりも臨床的な改善は起きにくかった。”