育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭蓋エントラップメントにおける喉頭蓋軟骨のX線による評価(Linfordら 1983年)

喉頭エントラップメントは、喉頭蓋を覆う粘膜を切除することによって、良好な治癒が得られると考えられています。しかし、喉頭蓋の低形成や潰瘍などを伴う場合には予後を慎重に判断する必要があります。特に喉頭蓋の低形成は、DDSPを起こしやすくなるため、エントラップメントを解消できても呼吸機能への影響が残ってしまう可能性が高いです。

喉頭蓋の長さ・大きさを評価するために、様々な方法が考案されています。X線検査による評価法と、内視鏡所見とX線画像の相関を調べた文献があります。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
喉頭部の側方X線画像では、喉頭エントラップメントや軟口蓋背側変位DDSPといった異常を見つけることができる。X線側方像における、甲状軟骨から喉頭蓋軟骨先端までの距離を計測すると、実際に解剖して測った長さと非常によい相関があった(r2=0.98)。24頭の健康なサラブレッド種馬において、甲状軟骨から喉頭蓋の長さは、拡大補正して8.76±0.44cmであった。一方で、9頭の喉頭エントラップメントおよび6頭の軟口蓋背側変位DDSPの馬では喉頭蓋は短く、それぞれ6.59±0.33cm、6.43±0.40cmであった。また、鼻咽頭部の断面直径は、健康な馬よりも軟口蓋背側変位DDSPの馬で小さかった。側方X線像において、咽頭喉頭蓋、喉頭、気管の測定項目に、健康な馬と異常な馬の間に差はなかった。
咽頭部のX線画像をとるには、頭は通常の安静な位置で固定するべきだ。首を伸ばすと咽頭喉頭蓋の距離は開くし、首を曲げると距離は短くなってしまう。鼻咽頭の直径は、首を伸ばすと、曲げているときよりも明らかに大きくなる。
この調査から、側方X線像にてサラブレッドの上気道閉塞で咽喉頭部の異常を疑うときには重要な診断的評価を行うことができることがわかった。”