育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭蓋エントラップメントの外科治療(Lumsdenら 1994年)

喉頭エントラップメントの治療法を比較した文献。

 

文献でわかったこと

手術法の比較

グループ1 経口でのエントラップメント軸側切開

グループ2 喉頭切開下での粘膜切開

グループ3 喉頭エントラップメント以外の上気道疾患を併発していた

 

結果の比較

経口での軸側切開は、喉頭切開に比較して治療費、入院期間、術後出走までの期間および合併症発生率が優れ、馬主の満足度も82%と高かった。

しかし、他の上気道疾患を併発している場合には競走復帰できない馬が多かった。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
51頭の喉頭エントラップメント症例について、医療記録を調査した。術後の成績は、オーナーへの聞き取り調査および競走記録をもとに評価した。
喉頭エントラップメント以外に上気道疾患をもたない症例に対し、経口での軸側切開を行った群をG1、喉頭切開下で粘膜切開を行った群をG2、喉頭エントラップメント以外の上気道疾患を併発していた群をG3とした。
G2と比較して、G1は治療費、入院期間、術後出走までの期間、合併症発生率がどれも優れていた(P<0.05)。オーナーへの聞き取り調査では、G1では82%がよくなったと回答したが、G2では27%のみであった。競走記録からの比較では、G1とG2でパフォーマンスに差はなかった。しかし、G3の馬ではG1やG2の馬と比較して復帰できない馬が多かった。
経口での披裂喉頭蓋ヒダ軸側切開は、単独の喉頭エントラップメントに対して推奨される手術である。喉頭切開下での手術法は、過剰に分厚い組織や瘢痕を伴うエントラップメントや、間欠的なエントラップメントの場合でその術式が適切であると判断したときのために取っておくべきだ。”