育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三手根骨盤状骨折のパフォーマンスへの影響(Martinら 1988年)

第三手根骨盤状骨折の術後パフォーマンスを、獲得賞金ではなく出られるクレーミング競走の金額で比較した文献があります。

 

文献でわかったこと

術後の競走復帰率は67.6%であったが、クレーミング競走でつけられる馬の値段は骨折前より低くなった。 

 

クレーミング競走とは?

www.britishhorseracing.com

(詳細はBHAのこちらのリンクから)

クレーミング競走は欧米で行われていますが、日本の競馬体系とは大きく異なっていて馴染みがありません。クレーミング競走とは出走する馬を売買するための競走です。定められた売買価格を支払って、これから出走する馬を購買します。この設定された購買価格はその馬にどれくらいの価値や能力があるか、という指標になるようです。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”要約

1977-1984年の期間に、第三手根骨盤状骨折を外科的に治療した31頭のサラブレッド種馬(平均年齢2.8歳)。全ての骨折は、手根間関節および手根中手関節の関節面におよんでおり、その形状は立方状もしくは盤状であった。競走中の骨折は20頭、調教中の骨折は8頭であった。患肢は右の方が有意に多く、右24、左7、P<0.05であった。

術後、21頭(67.6%)が1回以上出走した。骨折前に2走以上していた馬で、術後4走以上した馬は11頭がクレーミング競走に出走しデータがとれた。クレーミング競走に出る馬は購買用に決まった額のレースに出走させられていて、同じレースには自動的に同等な能力の馬が集められる傾向にある。これら11頭の馬では、術後に価値が平均$13900から平均$6500まで下落し、入線順位は術前平均5.8±3.16、術後平均5.8±3.30となった。発症前に出走しておらず、術後に競走した馬は5頭おり、その価値は平均で$8150であった。”