育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三手根骨盤状骨折をAcutrakで整復した臨床例17頭(Hirschら 2007年)

第三手根骨盤状骨折は、AO標準の皮質骨スクリューを用いて整復固定するのが一般的です。数年前にはAOスクリューにかわるスクリューが馬臨床でも試験的に用いられるようになってきました。以前にも紹介したアキュトラックスクリュー(Acutrak©)を用いて、盤状骨折を固定した臨床例についての報告があります。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”要約

目的

 第三手根骨盤状骨折をAcutrakスクリューを用いて整復した臨床的評価を報告すること。

 

研究デザイン

 前向き症例研究

 

サンプル

 第三手根骨盤状骨折を発症したサラブレッド競走馬17頭

 

方法

 1999-2004年の期間に、サラブレッド競走馬の第三手根骨盤状骨折に対してAcutrakスクリューを用いて整復した。データに関しては、①術前の変数:性別、発症時の年齢、患肢、発生状況、骨片の厚み・複雑さ・変位、出走回数および獲得賞金。②術後の変数:手術の合併症、初出走までの期間、出走数、および獲得賞金。術前後の出走回数および獲得賞金の比較にはWilcoxonの符号順位検定を用い、P<0.05を有意差ありとした。

 

結果

 17頭の内訳は、メス12頭、オス3頭、セン2頭であった。損傷時の年齢は平均3.3±1.0歳であった。患肢は右腕節が10頭、左腕節が7頭であった。10頭は調教中、7頭は競走中に発症した。出走歴のあった馬は15頭で、うち12頭が競走復帰した。初出走までの期間は平均349.3±153.9日であった。競走復帰した馬は術後の方が出走回数が多く、術前中央値3.5回 vs 術後中央値6.5回(P<0.04)であった。しかし、1走あたりの獲得賞金は、術後中央値$2452 vs 術前中央値$3061(P<0.30)で、減っていなかった。

 

結論

 Acutrakスクリューは、サラブレッド競走馬の第三手根骨盤状骨折の整復に有用である。

 

臨床的関連性

 Acutrakスクリューにより第三手根骨盤状骨折の十分な整復および安定化が可能で、骨片の分断および腕節軟部組織へのスクリューヘッドの衝突が起きる可能性を低下させることができる。”