第三手根骨の骨折は、内固定術による治療が最も良好な競走成績が得られることが示されてきました。それでは手術適応となる骨折の中ではどのような条件が予後に関係するのでしょうか。
文献でわかったこと
第三手根骨の骨折に対して手術を行った治療成績について回顧的に調査し、それぞれの骨折の大きさやタイプ、軟骨損傷、術式と成績の関係を分析した文献があります。
やはり関節への大きなダメージが想定される、骨片の変位・骨融解・重度の軟骨損傷は競走復帰に影響するようです。また、過去の第三手根骨を内固定した症例報告よりも競走復帰率は低く、慎重な術前評価とインフォームドコンセントが必要になりそうです。
”要約
目的
第三手根骨の骨折を外科的に治療した馬の競走馬としての予後を明らかにすること。
研究デザイン
回顧的症例研究
動物
第三手根骨の骨折を外科的に治療した馬125頭
方法
第三手根骨の骨折を外科的に治療した馬の医療記録を回顧し、年齢、性別、血統、患肢、骨折のタイプ、軟骨損傷の程度および手術方法を記録した。X線検査を調査し、骨折の深度、幅および変位を評価した。また骨増生、骨融解および骨片についてスコアリングした。オンラインデータベースより競走成績を得た。これらの独立変数と成績との関係を評価するため、単変量および多変量解析を行った。
結果
術後に44頭(43%)が出走した。サラブレッドの症例では、背側の骨折で35%(30/86)、矢状骨折で63%(17/27)の出走率であった。スタンダードブレッドの症例では、背側の骨折で77%(10/13)、矢状骨折で0%(0/2)の出走率であった。骨片の変位、骨融解および関節軟骨の損傷は、術後出走率に影響した。スクリューは4.5mmよりも3.5mmのほうがよく、スクリューの本数が少ないほうが術後出走率はよかった。
結論
第三手根骨背側の骨折は、これまでの報告よりもサラブレッドの症例における術後出走率は低かった。手術時に認められた軟骨損傷のような併発する関節疾患は、術後の競走復帰できる能力に影響した。
臨床的重要性
関節の完全性を回復するためには第三手根骨の内固定が必要であるが、競走復帰率はサラブレッドで42%、スタンダードブレッドで67%にとどまる。”