育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

近位深屈腱支持靭帯炎の12例(Dyson 2011年)

Proximal injuries of the accessory ligament of the deep digital flexor tendon in forelimbs and hindlimbs: 12 horses (2006–2010)

S. Dyson

Equine Veterinary EducationVolume 24, Issue 3. 31 August 2011

 

”要約

腕節から中手近位部および飛節から中足近位部における支持靭帯損傷の超音波検査所見はこれまでに明らかにされていない。本研究の目的は、①前肢および後肢の支持靭帯近位部の正常な超音波検査所見を記録すること、②前肢および後肢の支持靭帯近位部損傷の臨床的、検査画像上の特徴を記録することである。跛行のない10頭の馬の前肢および後肢の支持靭帯近位部を超音波検査した。2006年1月から2010年12月の期間で、12頭の近位支持靭帯炎の症例の記録を回顧的調査した。前肢の近位部支持靭帯炎損傷の4頭は局所の臨床症状がなく、疼痛部位の特定のための診断麻酔を必要とした。8頭は直近で後肢跛行を発症し、中足部近位内側面(7頭)または支持靭帯近位部領域全体(1頭)に浮腫性の腫脹を認めた。全ての症例で超音波検査により確定診断した。1頭は無関係の理由により引退した。前肢の跛行を示したうち1頭は完全な運動に復帰した。後肢跛行を示した6頭のうち4頭は運動復帰したが、残りの2頭は運動再開後に支持靭帯炎が再発した。前肢または後肢全体で触診における異常がない場合に、支持靭帯近位部損傷を考慮すべきだ。”