育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

深屈腱支持靭帯の力学的特性と年齢の関係(Beckerら 1994年)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約

生後1日から15歳齢までの馬の前肢21肢について、深屈腱支持靭帯の材質的な特性を明らかにした。張力(634-11416 N)、破壊応力(45-138 N/mm²)、破壊歪み(7-24%)、接線係数(33-1639 MPa)は年齢との相関が示された。本研究では、老齢馬の靭帯完全破断に要する力は平均7835Nで、若齢馬の平均8864Nよりも有意に小さかった。靭帯が耐えられる力と時間との曲線では、子馬、1歳および10歳以上から得られた靭帯で急激な減少があった。これは、多くの線維束が小さな力で破綻する、もしくは残りの線維よりも強い負荷に耐えられることを示していると考えられた。この力学的特性の違いは、他の動物種にも同様にみられる、年齢による支持靭帯の材質的な変化の結果である可能性がある。靭帯の近位・中位・遠位部をそれぞればらばらに解析すると、遠位部は近位部より高い歪みと柔軟性があった。老齢馬で支持靭帯炎がおきるのは、支持靭帯の材質的特性の違いによる線維の断裂によるものと示唆された。”