育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用に関する最新情報⑥(Zieglerら 2017年)

COX-2選択的薬剤は、ヒトや小動物領域ですでに広く使用されていて、馬用の製剤も多く発売されてきました。

抗炎症薬がCOX-2選択的であることのメリット、COX非選択的薬剤との比較、その使用に関する決まりについて2017年にまとめられたものがありますので紹介します。

全文はPubmedにて読むことができますので、リンクからご確認ください。

 

COX-2選択的NSAIDsの適正な投与法とその効果

・フィロコキシブは錠剤を0.1mg/kgで24時間ごとに経口投与する。

・他のNSAIDsとの併用は禁忌で副作用が出やすい。

・関節炎による跛行と消化管の疼痛管理には十分な効果が実験的に確認されている。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用 続き

米国で馬でのフィロコキシブの使用が初めて可能になったとき、United States Equestrian Federationは、他のNSAIDsと組み合わせて投与することを許可した。しかし、この決まりは変更され、今では他のNSAIDsと併用されることはなくなった。近年わかってきたCOX選択性からすると、フィロコキシブと非選択的NSAIDsを同時に投与することはCOX-2選択的NSAIDsの利点が失われる可能性があり、推奨されない。もっといえば、NSAIDsを組み合わせて投与することで合併症が起こる可能性が増す。前向きな非盲目的研究で、フィロコキシブ(0.1mg/kg,PO,q24h)とフェニルブタゾン(2.2mg/kg,PO,q24h)を10日間馬に投与したところ、血清中クレアチニン濃度の優位な上昇を認め、腎臓への副作用がある可能性が示唆された。

 

米国では、フィロコキシブはFDAから馬の変形性関節症治療において認可を受けている。研究では骨関節炎に関連した疼痛や炎症のコントロールに有効性が示されている。メリアル社が出資したランダム化、対照、非盲目、複数の施設における臨床研究では、フィロコキシブを0.1mg/kg,PO,q24hで投与した馬の80%で跛行グレードが改善した。

 

獣医師の中には、自らの臨床経験に基づき、フィロコキシブはフェニルブタゾンと比較して変形性関節症の疼痛コントロールが弱いという懸念を表している人もいる。しかし、メリアル社が出資した複数施設で、非盲目的、非劣性の臨床試験において、フィロコキシブ(0.1mg/kg,PO,q24h)とフェニルブタゾン(4.4mg/kg,PO,q24h)を比較したところ、慢性(4週間以上)で中程度から重度(>3/5または>2/3)の跛行の馬に対する7日または14日投与後の歩様の良化に有意な差はなかった。

 

フィロコキシブの消化管による疼痛への効果も調査されてきた。ある実験的な研究では、外科的に小腸の絞扼性通過障害を誘導した馬の回復後において、フィロコキシブ(0.1mg/kg,IV,q24h)は、フルニキシンメグルミン(1.1mg/kg,IV,q12h)と同様に疼痛コントロールできることがわかった。”