育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三中足骨近位背側の突起の臨床的意義(Fairburnら 2010年)

レポジトリー検査を含むX線検査で偶発的に見つかることがある、飛節の小さな突起(Spur:鳥のけづめ)についての文献です。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

研究を実施した理由

 第三中足骨近位背側の骨性突起はよくみられるが、その臨床的意義はわかっていない。

 

目的

 関節周囲の骨増生なのか、靱帯付着部の骨増生なのかをX線検査で鑑別できるかを明らかにするため、背側中足靱帯、前脛骨筋および第三腓骨筋の付着部を確定すること。また第三中足骨近位背側の骨性突起の所見率を明らかにすること。

 

仮説

 第三中足骨近位背側の骨性突起は、臨床的に正常な馬よりも跛行のある馬で所見率が高く、飛節遠位の疼痛や近位繫靱帯炎のある馬ではそれ以外の原因で跛行している馬よりも所見率が高い。

 

方法

 455頭の臨床検査および飛節X線検査を回顧的に調査した。症例を分類し、グループ1は臨床的に正常、グループ2-5は跛行診断の結果から分類した。X線検査から第三中足骨近位背側の骨性突起の有無を調査し、遠位足根関節の病態を分類した。骨性突起と跛行の関連、診断グループと遠位足根関節の異常グレードとの相関を、χ二乗検定を用いて統計学的に調査した。

 

結果

 骨性突起は25%の馬でみられ、13%は両側に所見があった。跛行の有無で突起の所見率に有意差はなく、近位繫靱帯炎や遠位足根関節の疼痛による跛行とその他の原因での跛行を示した馬の間にも所見率の有意差はなかった。骨性突起の所見は、遠位足根関節(足根中足関節:P=0.018、足根中央関節:P=0.027)のX線検査における異常グレードとの相関が認められた。多くの馬で、骨増生か付着部骨増生かを正確に区別することはできなかった。

 

結論と潜在的関連性

 他のX線所見がなく、第三中足骨近位背側の骨性突起の所見は偶発所見かもしれない。X線検査で遠位足根関節に異常のある飛節に骨性突起はよくみられ、遠位足根関節の骨関節炎を示唆する所見の可能性がある。臨床的意義は関節内麻酔により評価しなければならない。”