ヒト医療ではMRIによる早期の骨関節炎所見が高い感度で検出されます。軟骨および骨内部の炎症時に特徴的なパターンがみられることがわかっています。
近年、馬でも立位MRIが普及し、整形外科分野での使用が進んでいます。遠位足根関節変形性関節症の早期変化を検出ことはできるのでしょうか。
“要約
研究を実施した理由
遠位足根関節変形性関節症の疼痛の原因や病態発症については理解が進んでいない。MRIは、早期変化に感度が高いため、ヒトの骨関節炎の解析によく用いられている。
仮説
遠位足根関節の疼痛に関連して、疼痛を示した履歴のない馬に低強度の運動を課したときに、特徴的な軟骨下骨の厚みパターンの変化がみられる。
方法
足根関節の疼痛を示した履歴があり、X線検査で骨関節炎所見のあった9頭の成馬から16の飛節を集めた。また、疼痛を示した履歴はあるが、X線検査で異常のない2頭から3つの飛節を集めた。高解像度の矢状断3D、T1強調用グラディエントエコーシーケンス画像を得た。軟骨下骨の厚みの測定は、中心および第三足根骨の近位と遠位の背側および底側部、第三中足骨近位のそれぞれの矢状断面で行った。
結果
X線検査で骨関節炎所見のある飛節では、中心および第三中足骨の近位および遠位において、正中よりも内側や外側の軟骨下骨の厚みが大きかった。第三中足骨近位部では、内側よりも外側で軟骨下骨の厚みが大きかった。ほとんどの部位で正常馬と比較して軟骨下骨の厚みは増していた。X線検査で所見のない馬は関節が少なすぎて統計学的解析はできなかった。疼痛のある馬では、全ての部位で軟骨下骨の厚みは外側より内側で大きかった。疼痛のない馬では中心足根骨近位を除き、軟骨下骨の厚みは外側のほうが大きかった。
結論
疼痛のある飛節では軟骨下骨の厚みパターンに変化がみられる。異なるパターンは、異なる病態プロセスを表している可能性がある。
潜在的臨床関連性
遠位足根関節の骨関節炎につながる病態を解明するために、さらなる研究が必要である。”