育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

MRIによる遠位足根関節の軟骨下骨の厚みパターン(Branchら 2005年)

飛節には足根関節がブロック状に積み重ねられていて、それが体重による負荷を持続的に受けています。このような状況でみられる軟骨下骨の適応・モデリングに特徴はあるか、そして骨関節炎につながるような変化はないか、跛行のない飛節のMRI所見を解析した文献があります。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

“要約

研究を実施した理由

 遠位足根関節の痛みの原因として、骨関節炎は一般的にみられる。しかしその病態の発症については理解が進んでいない。骨関節炎の病態形成を理解するためには、足根関節の正常な構造および機能を認識しておくことが重要である。軟骨下骨の厚みが増すことは、骨関節炎の発症に関わっていることがわかってきたが、馬の飛節における軟骨下骨の厚みパターンはわかっていない。

 

仮説

 遠位足根関節の軟骨下骨の厚みパターンには再現性があり、その厚みは特に背側および外側で大きい。

 

方法

 後肢跛行がなく、軽い運動しかしていない成馬を解剖し、20の飛節を得た。MRIを撮影し、高解像度、3D、T1強調、グラディエントエコーシーケンスの条件で画像を得た。軟骨下骨の厚みは、中心および第三足根骨の遠位と近位の背側と底側で測定し、第三中足骨近位部でも測定した。

 

結果

 中心足根骨の近位において、軟骨下骨の厚みは正中よりも内側と外側で有意に大きかった。中心および第三足根骨の遠位、第三中足骨近位では正中より外側で大きかった。背側部の軟骨下骨は、中心足根骨の近位と遠位および第三中足骨近位において大きかった。中心および第三足根骨において、底側より背側の方が軟骨下骨の占める割合は大きかった。

 

結論

 後肢跛行歴のない馬では、遠位足根関節の軟骨下骨の厚みに再現性のあるパターンが見られた。これは、関節内の力のかかり方のパターンを反映している。

 

潜在的関連性

 本研究は、馬の骨関節病態を同定するさいに、参照できる一般した骨軟骨パターンの根拠を示した。”