競走馬に発生する上肢の骨折は、比較的レース経験の浅い若い馬に多く発生することが報告されています。
肩甲骨骨折においても同様の報告がなされており、調教の遅れている未出走のサラブレッドにはリスクが高いこと、長期の休養期間を挟んで調教や出走を再開した馬や、長期間スピード調教やレースを継続している馬も高リスクとなることが示されました。
参考文献
研究を実施した理由
壊滅的な肩甲骨骨折に関連する運動パターンを同定すれば、競走馬の事故を予防することができる。
目的
サラブレッドおよびクォーターホースの競走馬における肩甲骨骨折と関連する運動パターンがあるか明らかにすること。
方法
65頭のサラブレッドおよび26頭のクォーターホースの競走馬および2頭のコントロールとなる競走馬について、高速運動の履歴を調査した。運動の変数は、生涯のレースと、公式の調教レポートから作成した。運動の変数と肩甲骨骨折の関連は、条件付きロジスティック回帰解析を用いて調査した。
結果
サラブレッドの肩甲骨骨折発症馬は、調教の回数、調教と出走の回数、平均走行距離が、クォーターホースの骨折発症馬より多かった。クォーターホースでは、調教の頻度が低く、少ない回数で距離が長かった。生涯出走回数、距離、レース間隔、1回以上の休養がある馬の休養期間について、種による差は認められなかった。どちらの種でも、骨折馬では調教と出走が少なく、直近の距離が少なく、調教している日数が少なかった。一方で、サラブレッドのうち10回以上出走がある馬では、休養後長く出走していた。休養期間のあったクォーターホースでは、合計および平均休養回数は骨折症例のほうが多かった。大変量解析モデルにおいて、肩甲骨骨折発症のオッズ比は、未出走のサラブレッドで高く、オッズ比23.19(95%信頼区間3.03-177.38)であった。また、出走回数の多いクォーターホースではオッズ比は0.71(95%信頼区間0.54-0.94)と低かった。
結論と臨床歴関連性
高速調教が始まった時期の競走馬の集団で後れている馬は、肩甲骨のストレスリモデリングの症状がないか調査すべきである。長期間休養のあるクォーターホースや、長期の高速調教に耐えているサラブレッドは、調教している集団の中でもリスクが高い。