育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

若齢サラブレッドの足根骨盤状骨折(Steelら 2019年)

第三や中心足根骨の盤状骨折は、競走馬でみられる所見ですが、まれに1歳セリのレポジトリー検査でも古い骨折が見つかることがあります。ではその所見が持つ意味や、その後の成績との関連はどうでしょうか。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

背景

 セリにおけるX線画像の重要性を解釈し、当歳や1歳のサラブレッドが将来的に運動でき競走パフォーマンスがどうなるか説明することを求められる。筆者らは第三および中心足根骨の盤状骨折の所見率やX線画像所見を調査した。

 

方法

 X線画像のデータベースを調査し、当歳や1歳馬で第三および中心足根骨の盤状不完全または完全骨折を同定した。最初の診断時および放牧できた後における所見率および画像所見、その競走予後を明らかにした。

 

結果

 7676回の検査から、157頭の馬で186飛節で認められた。157頭の内訳は、126頭が片側の第三、29頭が両側の第三、1頭が対側の中心と第三、1頭が片側の中心と第三。186の飛節の内訳は、184が第三のみ、1が中心のみ、1が中心と第三であった。所見率は第三が2.40%(95%信頼区間2.07-2.76)、中心が0.04%(95%信頼区間0.01-.011)であった。底内背外斜位像にて、11.1±1.3ヵ月の馬で85.7%が診断された。最初に診断された時点では、第三足根骨の遠位関節面に不完全骨折が84.3%で認められた。サーベイやレポジトリーのX線検査において、骨折のスコアの改善(P<0.001)、背側のモデリング(P<0.001)、遠位足根間関節の骨関節炎スコア増加(P<0.001)で認めたが、足根中足関節の骨関節炎スコアは変わらなかった。レポジトリー検査において、検査の間隔が6ヵ月以上空いていた場合は71.9%で骨折治癒が見られた。市場価格に有意差はなく、2または3歳時の出走数は少なかった(P=0.023)が、対照馬と比較して2または3歳時に他の競走パラメータに有意差はなかった。

 

結論

 足根骨盤状骨折は若齢サラブレッドでもみられ、ほとんどは6ヵ月以上の放牧で治癒した。リスク因子を明らかにし、理想的な管理について確たる結論を出し、競走および長期の運動の予後を明らかにするためにはさらなる研究が必要である。”