育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

上腕骨骨折の評価と治療:54頭の回顧的調査(Carterら 1993年)

上腕骨骨折は

①非常に大きな負荷がかかる骨であるため、内固定してもインプラントが破綻してしまう。

②形状が複雑で、適切なプレートによる固定が困難である。

という難点があるため、成馬での内固定は困難とされています。

外科的な内固定術は、生後3ヵ月未満の体重が比較的軽い馬に限定した方法と考えた方がよさそうです。

一方で変位がひどくなければ保存療法でも十分に運動や放牧ができるまで回復できる可能性があります。

診断した時点で、上腕骨骨折のおよそ半数は諦めねばならないような重篤な骨折です。

  

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

オハイオ州立大獣医教育病院において、上腕骨骨折と診断した馬を対象とした。54頭のうち、24頭(44.4%)はX線検査後に安楽殺された。平均年齢は5.0歳であった。外科療法が選択された馬は13頭(24.1%)で、平均0.42歳であった。長期の馬房内休養による保存療法が選択された馬は17頭(31.5%)で、平均2.2歳であった。手術を行ったなかでも、骨折時の年齢が2ヵ月未満であった3頭(23.1%)は髄内ピンによる治療ができ、生存し問題なく運動することができた。保存療法では9頭(52.9%)はうまくいったとみなされ、4頭は問題なく運動でき、5頭は放牧は問題なかった。うまくいった9頭の来院時の年齢は平均1.81歳であった。近年内固定術の技術は向上しているが、保存療法は外科療法と同じくらい良いオプションである。”