若い競走馬や育成馬に多いとされる疲労骨折ですが、競走歴との相関が調査されたことはほとんどありませんでした。
実は若い育成馬にとっては、出走歴の少ない馬のほうが疲労骨折を起こしていることが多いようです。順調に調教が進められない原因が、実は微細なダメージである可能性もあると考えられます。
“要約
競走馬における長骨の骨折は、良好な予後を示す疲労骨折か、命にかかわる完全骨折かに分かれる。
2002-2016年の期間で、シンチグラフィまたは剖検により脛骨または上腕骨の骨折と診断したオーストラリアのサラブレッド競走馬について、回顧的なケースコントロール研究を行った。コントロールは同じレースまたは能検の出走馬で年齢や性別がマッチする馬とした。統計学的解析には、条件付きロジスティック回帰解析、χ二乗検定、マンホイットニーのU検定を用いた。
致死的な骨折は上腕骨骨折(12/47,26%)が脛骨骨折(3/35,8.6%)よりも有意に多かった(P=0.049) 。上腕骨および脛骨骨折について、症例と対照の間に損傷前の競走歴に明らかな違いはなかった。上腕骨および脛骨骨折の症例馬は、出走しているサラブレッド集団の年齢と比較して有意に若かった(P<0.001)が、なかでも上腕骨骨折の症例(3.3±0.9歳)は、脛骨骨折の症例(2.8±0.8歳)より年齢は高かった(P=0.005)が、一方で出走回数は上腕骨骨折の症例(0.5±1.1回)は、脛骨骨折の症例(1.3±1.7回)より少なかった。出走していた割合は致死的な上腕骨骨折の症例で16.7%、致死的でない上腕骨骨折の症例で55.6%で、有意な差があった(P=0.02)。
まとめると、脛骨と上腕骨の骨折は若い競走馬に発生し、トライアルや競走に出る機会のない馬ほど致死的な上腕骨骨折を起こしやすい。”