育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

競走馬における上腕骨疲労骨折と完全骨折の相関(Stoverら 1992年)

さまざまな骨折の病態に関する研究を行っているStover先生の原著で疲労骨折と完全骨折の相関を調べた文献です。

 

文献のハイライト

完全骨折した上腕骨を調査したところ、骨折線をまたぐような仮骨形成が10/13(76.9%)に認められたことから、疲労骨折から完全骨折に移行したと推察されています。

この文献でもやはり出走歴のない若馬が調教中に発症するケースが多いという点が興味深いです。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

1990年2月24日から1991年7月10日までの期間で、調教または競走中に21頭の競走馬が片側の上腕骨完全骨折を発症した。患肢は左右で差はなく、雌雄の差もなかった。ほとんどの骨折は調教中に発生し、2歳または3歳齢であった。過去に少なくとも1回出走していたことが分かっていた馬は16頭中5頭で、それらのレース間隔は最後のレースから骨折までの時間よりも短かった(P=0.07)。詳しく調査できた13頭の上腕骨のうち、10頭で骨折線の一部をまたぐ仮骨形成が明らかで、これは疲労骨折が既に存在していたことを示唆している。”