MRI検査など、高次の詳細な画像検査が可能となり、掌側の骨軟骨疾患がサラブレッド競走馬で診断されるようになってきました。しかしX線検査単独では診断は難しいとされ、往診先で診断するのは困難でした。しかし最近ではDR(Digital Radiography)が馬獣医療に導入され、X線検査の画像の質も格段に向上してきています。
そこで今回は、球節掌側の骨軟骨疾患をX線検査で診断することができるか検討した文献を紹介します。
”背景
サラブレッド競走馬において球節掌側の骨軟骨症(POD)は多く見られるが、X線検査単独で診断することはいまだ困難である。目的
X線検査によるPODの診断感度および特異度を向上すること。研究デザイン
前向き、縦断研究方法
50頭のサラブレッドに、前肢球節のX線検査を9方向から撮影した。死後、球節を解剖し、全体の病理所見を記録・スコア化した。3名の臨床医がそれぞれX線画像を読影し、所見を記録した。もう一人の臨床医がそれぞれのX線画像と検体を併せて回顧し、X線所見と関節の病態の相関を評価した。これをゴールドスタンダードとした。そしてそれぞれの臨床医によるPODの診断をゴールドスタンダードと比較した。PODに関連するX線画像の特徴を同定してトレーニングマニュアルを作成し、画像を再読する前に読ませた。それぞれの臨床医がPODを診断できる能力を再評価した。
結果
PODはよくみられる所見(88/100関節)であった。3人すべての臨床医がPODを診断した結果、その感度(平均0.37)および特異度(平均0.75)はどちらも低かった。反対に、ゴールドスタンダードの診断感度は0.95、特異度は1.0であった。PODは第一に顆掌側の巣状のX線透過性領域、軟骨下骨の輪郭の途切れおよび顆掌側の巣状の硬化所見と関連があり、二次的な所見として近位種子骨尖部または底部の骨棘、顆掌側の平坦化、第三中手骨遠位背側面のキャビテーションと関連があった。二次的なX線所見はしばしば簡単に見つけることができた。トレーニングを受けた後、臨床医のPOD診断は有意に改善した。
主な限界
研究を完遂した臨床医が2人しかいないこと。PODのない症例の割合が低いこと。
結論
臨床医もPODに関連したX線所見を頻繁に見落としている。関連性のあるX線所見を見せておくことで、診断感度と特異度は改善できる。”