育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

国内のCOX-2選択的NSAIDsを用いた研究

 

国内でのCOX-2選択的NSAIDs使用に関する臨床的な報告は見当たりませんが、実験的に作成したエンドトキセミアモデルを用いて治療効果を検討した研究が2報あります。

 

背景

腸炎症例における炎症のコントロールという臨床的に大きな課題があります。腸炎では、腸管の透過性亢進や壊死によってバリアが崩壊することで、消化管内に存在するグラム陰性菌に含まれるリポ多糖が血中に移行し、エンドトキシン血症(エンドトキセミア)の状態になります。これが全身性に強い炎症を引き起こし、合併症として蹄葉炎が起こることや、さらに重度な全身性の炎症でDICや多臓器不全がみられることが知られています。

 

COX-2選択的NSAIDs

エンドトキセミアによる炎症のコントロールにはフルニキシンが選択されますが、近年馬でも使用され始めたCOX-2選択的NSAIDsは、フルニキシンと同等の鎮痛効果があることや、COX-1を温存することによる消化管バリアの保持が期待できることから注目され、臨床的な使用が検討されています。

 

国内の研究報告

・エンドトキセミアモデルにおいてメロキシカム経口投与による疼痛軽減が可能である。

・エンドトキセミアモデルにおいてメロキシカム経口投与によりフルニキシン経口投与と同等の疼痛軽減効果が得られる。

 

 

参考文献 

ウマのエンドトキセミアモデルに対するメロキシカムの疼痛軽減効果

競走馬に関する調査研究発表会2017 

“目的

 馬のエンドトキセミアモデルにおけるメロキシカムの疼痛軽減効果を検討すること。

 

方法

 サラブレッド5頭にリポ多糖(LPS)を30 ng/kg静脈投与してエンドトキセミアモデルを作成した。LPS投与前にメロキシカム0.6 mg/kgまたは生理食塩水を経口投与して、クロスオーバー試験を行った。LPS投与前60分~投与後420分まで経時的に観察し、評価項目は主観的なペインスコア、TPR、蹄壁温、WBC、TNF-αおよびコルチゾル濃度であった。

 

結果

 評価項目のなかで統計学的に有意な差が認められたのはペインスコアであった。メロキシカム投与群ではLPS投与60分後からペインスコアが上昇し、投与後240,300,360分後に有意な上昇がみられた。対照群と比較してLPS投与後60,90,120,180分後のメロキシカム投与群のペインスコアは有意に低かった。

 

考察

 メロキシカム前投与はエンドトキセミアモデルの疼痛を軽減できることが示され、エンドトキセミアの治療薬となる可能性が示された。”

 

 

 

ウマのエンドトキセミアモデルに対する経口メロキシカム製剤と経口フルニキシン製剤の治療的効果の比較

競走馬に関する調査研究発表会2018

“目的

 エンドトキセミア治療の第一選択薬であるフルニキシンメグルミンとメロキシカムを比較すること。メロキシカムの臨床的に効果的な使用方法を検討すること。

 

方法

 サラブレッド9頭に対して、先行研究と同様にLPSを投与しエンドトキセミアモデルを作成。メロキシカム投与群とフルニキシン投与群を5頭ずつ2群に分け、1頭はクロスオーバー試験。メロキシカム投与群はメタカム(0.6 mg/kg)、フルニキシン投与群はバナミンペースト(1.1 mg/kg)をそれぞれLPS投与30分後に投与。LPS投与60分前~投与420分後まで経時的に観察し、先行研究と同様にペインスコア、蹄壁温度、血中TNF-α濃度などを評価し群間比較を行った。

 

結果

 ペインスコアは両群ともにLPS投与後60分後から上昇し、メロキシカム投与群では90分後、フルニキシン投与群では60分後が最高値となり、180分後には両群とも投与前のスコアに復した。最高値に有意差はなく、疼痛効果は同等と示唆された。ピークタイムの差は薬物の吸収や分布の差と推察された。蹄壁温度は両群ともLPS投与60分後から下降し、メロキシカム投与群では180分後、フルニキシン投与群では120分後に最低値となった。

 

考察

 エンドトキセミアモデルに対する疼痛軽減効果は同程度で、薬物の吸収や分布に差があることが示唆された。臨床現場では、即効性が求められる症例にはフルニキシンが、長期的な投与にはメロキシカムが有用であると考えられた。”