背景
NSAIDsにはCOX非選択的なものとCOX-2選択的なものがあります。
COX-1は恒常性維持に必要な酵素であるため、これを阻害しないことで副作用を出にくくするCOX-2選択的な薬剤が求められてきました。
馬の体内ではCOX-2選択的NSAIDsがどのような影響を及ぼしているのでしょうか。今回は潰瘍の重症度と、炎症マーカーとして白血球(主に好中球)に多く含まれるミエロペルオキシダーゼの濃度について検討した文献を紹介します。
この文献では、
・フェニルブタゾン(COX非選択的)とフィロコキシブ(COX-2選択的)のどちらも、10日間連続投与により胃潰瘍と糞中MPOが増加したことから胃腸の損傷を誘導することがわかった。
・フィロコキシブのほうが胃潰瘍スコアが低く、糞中MPOへの影響も小さかった。
“要約
目的
シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、COX非選択的NSAIDsに比べて胃潰瘍および胃腸の炎症を減少させるか明らかにすること。
研究デザイン
ランダムブロックデザイン
動物
25頭の健康な成馬
方法
対照馬はランダムに振り分け、プラセボ5頭、フェニルブタゾン10頭、フィロコキシブ10頭にそれぞれ10日間毎日投与した。0日および10日目に胃内視鏡検査を行い、腺部および無腺部粘膜の潰瘍を公開されている基準に基づいてスコア化した。0日、10日、20日目の糞便を採取し、ELISAにより糞中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)を測定した。
結果
どちらのNSAIDsによっても胃腸の損傷は誘導され、これは胃潰瘍のスコアおよび糞中のMPOから明らかであった。腺部胃潰瘍のスコアおよび糞中のMPO濃度は、フェニルブタゾン投与10日目で有意に高かった。NSAIDs投与により糞中のMPO濃度は上昇したが、フィロコキシブ投与群では投与終了後10日で有意に減少した一方で、フェニルブタゾン投与群では投与終了後10日経ってもベースラインより高く保たれていた。
結論
どちらのクラスのNSAIDsでも胃潰瘍は誘導されたが、COX-2選択的NSAIDsにより誘導された腺部の胃潰瘍は重症度が低かった。どちらのNSAIDsも10日間の投与で糞中のMPO濃度は上昇したが、この上昇はCOX非選択的なNSAIDsであるフェニルブタゾンでのみ有意であった。
臨床的関連性
本研究の結果から、どちらのクラスのNSAIDsも胃腸の損傷を誘導することが示唆された。しかしながら、本研究で用いた濃度ではCOX-2選択的NSAIDsであるフィロコキシブでおこる損傷の程度はましだった。”