育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

競走馬における心雑音の所見率と臨床的重要性(Krizら JAVMA2000年)

心雑音の聴取は静かな環境で、心臓とその内部にある弁の位置を意識して行うことが肝要です。もちろん左右両方から聴診します。しかし残念ながら、聴診でどの弁の異常か間違わずに判別することは不可能です。

 

軽度な心雑音は、現役の競走馬ではよくみられる所見で、競走能力への影響はあまりないように思われます。ただし、連続的な評価が必要で、例えば急激に雑音が大きくなる場合や不整脈を伴う場合にはより詳細に検査する必要があります。

 

心雑音の評価と競走成績の関連をサラブレッド競走馬について解析した文献があります。この文献では800頭を超える現役競走馬の過去2年間の競走成績と心雑音の関連を調べました。その結果、8割以上の競走馬に心雑音が聴取されましたが、競走成績との明らかな関連は認められませんでした。聴診のみで評価が十分なのかはこの後の調査で徐々に明らかにされていきます。

 

  

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

目的

 サラブレッド競走馬におけるいくつかのタイプの心雑音について所見率を明らかにし、心エコーおよび前2年間の競走成績から雑音とパフォーマンスの相関を評価すること。

 

デザイン

 臨床的回顧的研究

 

動物

 846頭のサラブレッド競走馬

 

方法

 3人の検査者により聴診がなされた。30頭についてはドップラー心エコー検査も行った。753頭について、心雑音とパフォーマンスの相関を評価するため、競走成績についての統計学的解析を行た。

 

結果

 846頭中686頭(81.1%)で心雑音が聴取された。心臓基部における収縮期雑音が最も多く、365頭(43.1%)は肺動脈弁領域の収縮期雑音、232頭(27.4%)は大動脈弁領域の収縮期雑音が聴取された。三尖弁領域での収縮期雑音は241頭(28.5%)で聴取されたが、僧帽弁領域での収縮期雑音は32頭(3.8%)しか聴取されなかった。拡張期の雑音は、収縮期雑音よりも少なかった。競走成績を調査したが、雑音とパフォーマンスに有意な相関はみられなかった。

 

結論と臨床的関連性

 本研究から、心雑音は競走馬においてよくみられる所見であるが、そのほとんどは臨床的重要性はないと思われると示唆された。”