“要約
研究を実施した理由
運動誘発性肺出血EIPH、三尖弁逆流TR、僧帽弁逆流MRは、調教を受けたサラブレッドにおいて高い罹患率がみられる。肺血管内圧が上昇し、僧帽弁逆流による肺静脈高血圧が見られるときには、肺毛細血管のストレス性の傷害によるEIPHが引き起こされている可能性が最も高い。
仮説
EIPHを繰り返した履歴のある馬では、MR、EIPH、右心室のあいだに相関がある。これは調教中の肺高血圧および心拍出量の増加、すなわち右心室の後負荷と前負荷のどちらも増加しているからである。
方法
121頭の出走できる状態にあるナショナルハント用のサラブレット競走馬について、心エコーと聴診を行った。心エコーは右側から行い、Mモード画像を三尖弁の直下で描出し、カラーフロードップラーは三尖弁から右心室の血流を評価した。僧帽弁は同様に左側から検査を行った。MRとTRはカラーフロードップラーによるグレード分類を行った。EIPHに関するバイナリデータは、その病歴の有無についてかかりつけ医に記録等を回顧的に調査して得た。データ解析は、標準化ロジスティック回帰解析を用いた。
結果
EIPHは、拡張期および収縮期のRV測定値と有意な性の相関を認めた。この相関は、年齢や体重の影響を受けなかった。EIPHと聴診およびカラーフロードップラーによるTRおよびMRとの相関は認められなかった。
結論と臨床的関連性
本研究は、EIPHの分類方法には制限がある。しかし、本研究で用いたサラブレッドの集団では、EIPHと馬の年齢、体重、TRおよびMRとの関連は認められなかった。右心室内径は、EIPHを発症した馬で明らかに拡大が見られていたことから、EIPHを引き起こす要素は、直接的もしくは間接的に競走馬における右心室のリモデリングに影響していることが示唆された。”