育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

高温多湿環境下での運動心エコー所見(Marrら 2010)

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

“要約

著者らは、高温多湿環境下での運動は心エコー所見に影響し、低温環境下での運動と比較して心臓の断面および機能の指標が変化すると仮説を立てた。臨床的に健常な馬を用いて、トレッドミル運動試験の前、直後、10分、30分、60分後にMモード心エコー検査を行った。同一の検査を、20度/40%の環境および30度/80%の環境で実施した。全ての馬が低温環境での運動試験を行ったが、1頭は高温多湿環境のみ行った。弛緩時間は、心拍数と負の相関を認めた。低温環境下では運動直後に心拍数は増加したが弛緩時間は減少した。高温多湿環境下では、心拍数の回復に要した時間は延長した。運動後の弛緩時間は高温多湿環境下で有意に減少した。高温多湿環境下では、拡張期LVIDdおよび収縮期LVIDsの左心室内径は運動後に減少し、運動後60分後まで減少が継続した。LVIDdおよびLVIDsに有意な減少が見られたことは、高温多湿環境下の運動後、脱水による前負荷の減少または、回復期を通して血液の再分配が起きたことを反映している。心エコーは、異なる気候条件での運動に対する心臓の反応を評価する有効なツールである。”