はじめに
血小板とは
血小板は体内で1日当たり35,000/µL産生され、4-5日で破壊・回収されます。
血小板は、止血機構の主要な細胞です。しかしそれだけではなく、様々なメディエーターを産生することにより、炎症、っ芽根季、組織再生、さまざまな疾患の病態形成にもかかわっていることがわかってきています。
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血小板減少症
血小板減少症となる主な要因は、血小板の消費過多、血小板の産生低下、血小板の破壊です。
最も多い要因は血小板の消費過多と破壊で、これは原発となる全身性の疾患から二次的に発生することがほとんどです。壊死性または絞扼性の腸管疾患や腸炎、腫瘍、DICなどでも血小板が急激に消費されることで血液中の血小板数が減少します。
免疫介在性血小板減少症
まれに免疫介在性血小板減少症があることも知られています。本来、自己の細胞である血小板は免疫寛容のなかにあり、破壊されることはありません。しかし何らかのきっかけで血小板の抗原に対する抗体が産生される、血小板と結合したタンパク質に対する抗体が産生されるなどして、血小板が免疫細胞の攻撃対象として認識されてしまうことがあります。
免疫介在性血小板減少症の新たな診断法
免疫介在性血小板減少症は、自己の血小板に対して免疫反応を起こし、破壊することによっておこる病態です。血小板にIgG抗体が結合することで、免疫細胞の攻撃対象と認識されます。
以上のことから、免疫介在性血小板減少症ではIgG抗体が結合した血小板があると考えられます。フローサイトメトリーと呼ばれる器械を用いて、この複合体を検出した文献が複数の動物種やヒトで発表されています。
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文献でわかったこと
フローサイトメトリーによる 免疫介在性血小板減少症の診断
血小板減少症の症例馬3頭について、IgG抗体が結合した血小板の割合は、正常馬と比較して多かった。
他に血小板減少症の原因となる鑑別診断を全て除外した上で、フローサイトメトリーによる抗体結合血小板が増加していれば暫定診断が可能となる。
参考文献
M Kimberley J McGurrin 1, Louis G Arroyo, Dorothee Bienzle
J Am Vet Med Assoc. 2004 Jan 1;224(1):83-7, 53. doi: 10.2460/javma.2004.224.83.
要約
免疫介在性血小板減少症は、馬の血小板減少症の原因として散発的にみられるが、確定診断することは困難である。本研究では、3頭の重度な血小板減少症について、血小板表面に結合したIgG抗体のフローサイトメトリーによる検出を用いて、免疫介在性血小板減少症の仮診断ができるか検証した。3頭の血小板減少症の馬において、表面にIgG抗体が結合した血小板が、それぞれ4.28、5.04、7.95%と確かに検出された。一方で健常な馬6頭では0.03-0.15%の割合であった。これらの結果と、血小板減少症の他の原因の除外を併せて、免疫介在性血小板減少症を診断できる。症例馬は、糖質コルチコイドのみ、もしくはアザチオプリンを併用して、徐々に血小板減少症が解消した。フローサイトメトリーによるIgG抗体が結合した血小板の検出は容易に行うことができ、免疫介在性血小板減少症の補助的な診断に有効である。