育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

シンチグラフィ検査による肋骨骨折の診断(Dahlbergら 2011年)

肋骨骨折は馬の跛行の原因のひとつになります。

特に頭側の肋骨骨折は前肢跛行の原因となりますが、肩から上腕の分厚い筋肉に包まれており、X線検査による診断は困難です。

このような疾患にはシンチグラフィ検査が有効となります。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

頭側の肋骨の異常がある馬では、急性の重度な跛行を呈し、常歩で患肢を引き出す時に前肢を外転するという特徴的な見慣れない歩様を呈する。尾側の肋骨に異常があれば、鞍をつけて騎乗したときに症状を呈する。

肋骨の損傷が記録された20頭の馬を回顧的に調査した。単独または複数の肋骨に放射性医薬品取り込みの増加が25か所に認められた。第1肋骨の損傷は52%(13)で認められ、そのうち4つは胸骨との関節面のすぐ背側、8つは肋軟骨結合部、1つは椎体との結合部に所見が認められた。第2-8肋骨には6つ(24%)の肋骨シンチグラフィ異常所見が認められ、1つは胸骨との関節面のすぐ背側、3つは椎体との結合部、2つは肋軟骨結合部の近くに認められた。第9-18肋骨の異常は6つ(24%)で認められ、5つは肋骨中央部、1つは椎体との結合部に所見を認めた。

20頭の症例馬は、シンチグラフィ所見の臨床的関連性から3つのグループに分類された。グループ1(3頭)は、肋骨の異常所見に関連した臨床症状を認めた。グループ2(6頭)は肋骨の異常がもっともらしく臨床症状と関連していそうだった。グループ3(11頭)は肋骨の異常と結びつかない臨床症状であった。

頭側の肋骨に異常がある馬では、X線側方像をアレンジして、患肢を尾側に引っ張って45度角度をつけて撮影することで診断できるようになった。